【神奈川県・箱根強羅温泉「円かの杜」】環境に配慮した温泉と美食を
温泉
2024/12/06
温泉は、生きている地球の力が詰まった恵みの泉。四季のある美しい日本を訪ねて、その土地ならではの温泉に入り、身も心もいやされる旅へ。“カリスマ温泉ソムリエ”石井宏子さんが、いまこそ出かけたい旬の湯宿をご紹介します。

- 取材・文/石井宏子(旅行作家・温泉ビューティ研究家)

- 神奈川県
温泉旅館はどんどん進化しています。近年は旅をするときも、環境への配慮をしているリゾートや宿選びを意識する人が増えてきました。今回ご紹介する、箱根強羅(ごうら)温泉にある「円(まど)かの杜(もり)」は、施設はもちろん、提供する料理にまでその考えを取り入れた、“環境コンシャス”な温泉宿です。
2本の自家源泉でしっとりぽかぽかに

箱根の火山活動は約40万年前に始まり、神の住む山があると考えられてきました。いまなお感じられる火山のエネルギーが森と水を育て、豊かな温泉を生み出します。円かの杜は、敷地の森のなかに2本の自家源泉が湧出しており、大浴場と客室で異なる泉質の温泉が楽しめます。大浴場は、ナトリウム‐塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩温泉、弱アルカリ性で、しっとり保湿し、体の芯まで温まり、すべすべ美肌もかなうマルチ型温泉。露天風呂(冒頭写真)は3つの湯船に高低差があり、森のなかへと誘われて、自然と一体になるような安堵感があります。大きな窓から箱根連山が望める内湯(写真)には、浴槽に仕切りがあり、源泉が注がれている側は熱め、もう一方はぬるめとなるよう、湯船の温度に変化をつけています。仕切られた内湯を行ったり来たりすることで温冷交代浴になり疲労回復のサポートとなるよう、工夫されているのです。
飛騨伝統建築の手法で木のぬくもりに包まれる
宿は、飛騨伝統建築の手法を取り入れた古民家風で、水車が迎えてくれる玄関を入ると、大きな一枚板のカウンターや太い梁のロビーへと続きます。「宿のために切り出された欅(けやき)」だそうで、森の息遣いが聞こえてきそうなほどのぬくもり。
部屋のなかにも、太い梁が通り、一枚板のテーブルが置かれ(写真)、障子を通した優しい光にほっと気持ちが和みます。全室に専用の露天風呂(写真)が付いていて、こちらには大浴場とは別の自家源泉が注がれています。泉質は保湿効果のあるナトリウム−塩化物温泉です。肌を塩の被膜が覆い、温泉で温まった体の熱や水分を逃がしにくくするため、うるおいが持続します。
宿の一角にある隠れ家風のカウンター割烹


円かの杜にあるカウンター割烹「割烹むげん」では、旅館としては世界で初めて、二酸化炭素を排出しない次世代エネルギーである水素を活用した調理システムを導入しています。
この宿が環境問題を考えるきっかけとなったのが、箱根町を襲った2019年の「令和元年台風第19号」による豪雨でした。
円かの杜は被害がありませんでしたが、早雲山駅のすぐそばにあった系列旅館に土砂が流れ込み大きな被害に遭ったのです。「地球温暖化の影響による自然災害を目の当たりにして、旅館ができる小さな一歩でもいいので、何か気候変動の問題に取り組むことができないかと考えて、水素コンロの導入を決めました」と、おかみの松坂美智子さん。
このカウンター割烹は、宿の一角にある隠れ家のような部屋で営業しており、これまでは、常連さんの秘密の料亭のような存在でした。しかし、料理人による水素コンロの調理を一般のお客様にも楽しんでいただくことで環境問題を考えるきっかけになればと、2024年7月から「【水円 suien】カウンター割烹『割烹むげん』プラン」をスタートさせたのです。
「水素コンロ(写真)は、燃焼の際に水素と空気中の酸素が結合して水蒸気になり、(ほかの調理法に比べて)高温で蒸し焼きにできるという特徴があります。無臭の水素を使うことで、食材本来の香りやうまみが引き出せるんです」と、総料理長の柴尾良太さん(写真)。
うまみを引き出す水素調理、その知られざる実力

割烹むげんは、食材にもこだわりがあります。肉は、仕上げが丁寧な滋賀県草津市の精肉店「サカエヤ」の近江牛や経産牛を使用。土づくりからこだわる岩手県北上市にある「うるおい春夏秋冬(ひととせ)」の野菜や、京都府綾部市にある「河北農園」の「賀茂茄子」など、どれも柴尾さんが選び抜いて仕入れています。献立は日によって替わりますが、筆者が泊まったときの料理をご紹介すると、のどぐろの塩麹焼き(写真)は、脂がのっていながらもふんわりとした口どけでとても軽やか。ヒレステーキ(写真)は、ジューシーな肉汁とうまみが口のなかにあふれます。水素調理の料理を味わうのは初めてでしたが、野菜本来の香りが引き立ち、これほどのおいしさに繋がるとは、その実力に驚かされました。
最後は土鍋ごはんと水素調理の合わせ技
夕食のシメは、土鍋で炊きあげた河豚(ふぐ)ごはんに、水素調理でふっくらと仕上げた焼白子がたっぷり! おまけにウニまでトッピングされていて(写真)、悶絶級のおいしさです。
柴尾さんは、水素調理の特徴を最大限に生かせる食材を求めて、全国の生産者や漁師さん、水産加工や畜産加工のスペシャリストを訪ね歩いています。水素コンロでどのように調理すれば食材の味を最大限に生かすことができるかと試行錯誤を重ねているそうで、訪れるたびに、とびきりの食材を新しい試みで調理し、楽しませてくれます。
宿のさらなる環境コンシャスな取り組みも進行中。木製の歯ブラシやノンシリコンシャンプーといったアメニティ、水素ボンベの縮小化や、水素燃料の蓄電池への転換など、二酸化炭素削減の見える化をめざして動いているそうで、今後も要チェックです。
(*データ)
「円かの杜」まどかのもり
- 住所 神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320-862
- 電話番号 0460-82-4100
- 料金 おひとり様1泊2食付41,000円~、「【水円 suien】カウンター割烹『割烹むげん』プラン」は、おひとり様1泊2食付63,000円~(いずれも2名1室利用時・サービス料込・入湯税150円別)
- 公式サイト https://gorahanaougi.com/madokanomori/
(*著者プロフィール)

いしい ひろこ●旅行作家・温泉ビューティ研究家。年間200日ほど国内外の温泉を旅する。雑誌や新聞などに旅コラムを書き、テレビ・ラジオにも出演。温泉や食、自然環境を通じて美しくなる“ビューティツーリズム”を研究。杏林大学温泉療養学兼任講師、国際中医師、日本温泉科学会代議員、日本温泉気候物理医学会会員、カリスマ温泉ソムリエ。著書に『感動の温泉宿100』(文藝春秋)、『新・温泉ビューティ』(グリーンキャット)ほか。https://www.onsenbeauty.com/
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