夏を乗り切る“魅惑のぬる湯” 徳島県「ホテル祖谷温泉」
温泉
2024/08/09
温泉は、生きている地球の力が詰まった恵みの泉。四季のある美しい日本を訪ねて、その土地ならではの温泉に入り、身も心もいやされる旅へ。“カリスマ温泉ソムリエ”石井宏子さんが、いまこそ出かけたい旬の湯宿をご紹介します。

- 取材・文/石井宏子(旅行作家・温泉ビューティ研究家)

- 徳島県
四国の真んなかに位置する大歩危祖谷(おおぼけいや)温泉郷は、岐阜・白川郷や宮崎・椎葉村(しいばそん)とならぶ日本三大秘境のひとつ「祖谷」にあります。今回ご紹介する“魅惑のぬる湯”が湧いているのは、深い渓谷を流れる祖谷川のほとり。常人ではとても歩いて下りることができないと思えるほど急峻な斜面を、宿から専用のケーブルカーでおよそ5分下って辿り着く源泉かけ流しの露天風呂は、絶妙のぬる湯加減。夏こそ行きたい楽園温泉です。
ケーブルカーに乗って、秘境の谷底温泉へ

断崖絶壁の渓谷にへばりつくようにして沿う道を進むと、一軒宿「ホテル祖谷温泉」が見えてきます。かつてこの一帯は「風呂谷(フロノタニ)」と呼ばれ、深い渓谷の下からもくもくと立ち上る湯煙が見えたとか。幽玄な大自然に湧く名物の温泉へは、宿専用のケーブルカーに乗ってゆっくりと谷底へと下っていきます(写真)。
人肌ほどのぬる湯で神秘の泡に包まれる

豊富な湯量が自噴する源泉のすぐ横に露天風呂があり、加温・加水は一切せずに湧きたての温泉が大量に注がれています。泉質はアルカリ性単純硫黄温泉で、温泉に入った瞬間にわかる、とろとろの感触、ふんわりとただよう硫黄の香り。温度38℃で、湯船のなかは体温よりほんのり温かい“ぬる湯”のため、浸かった途端に思わず「うわー。気持ちいい!」と、声が出るほど。そして、さらなる感動はその後にやってきます。人肌の湯のぬくもりに身をゆだねていると、肌に小さな泡がびっしり。これは、地中の温泉のなかに溶け込んでいた空気が気泡になったもので、泡粒にそっとふれると、とろけるように白濁して消えていきます。
「せせらぎの湯」(冒頭写真)では、国の天然記念物に指定された大歩危峡から続く結晶片岩の迫力ある景観が目の前に広がります。「渓谷の湯」(写真)では、すがすがしい渓流を目の前に感じながら、身も心も浄化されるような風景を楽しむことができます。それぞれ日替わりの男女入れ替え制で楽しめます。
温泉好きの方には、さらにマニアックなおすすめの湯があります。貸切露天風呂「やまぎりの湯」(写真・有料予約制)には、別の源泉を注いでいるのです。泉質は同じアルカリ性単純硫黄温泉ですが、小さめの湯船に大量に注いでいることもあって、前出の露天風呂よりとろみも硫黄の香りも濃い、まるで濃縮美容液のような湯にうっとりします。
渓谷に浮遊するかのような“天空のホテル”

祖谷渓谷に突き出すように建てられた宿の客室からは、まるで渓谷に浮遊しているかのような絶景を満喫できます。近年、温泉付きのスイートタイプの客室を増やしたため、“秘境ラグジュアリー”な滞在を楽しめるようになりました。2023年リニューアルの「展望風呂付客室・天籟(てんらい)」(写真)は、2脚並んだ桜製作所・ジョージナカシマの「コノイドラウンジ」チェアが自慢の絶景特等室。客室にある展望風呂からも、渓谷にたなびく雲を眺めながらぜいたくな時間を過ごせます。
夕食と朝食で“ローカルガストロノミー”を楽しむ

祖谷渓谷を望むレストランで味わう「阿波特選会席」の夕食(写真)は、地元ジビエの鹿肉ロースト、新鮮なアメゴの姿造り、阿波牛ステーキなど、地域の食材が美しい盛り付けで提供されます。地元酒蔵の日本酒とあわせて楽しみたい美食です。

翌日の朝湯は、館内にある大浴場(写真)へ。祖谷渓谷を一幅の絵画に見立てたような眺望を楽しめます。こちらは加温したホカホカの温泉で、天空に浮かぶようなインフィニティ風呂です。雨上がりだったこの日は、渓谷に雲が流れる幻想的な風景になりました。
朝食は窓側のカウンター席が人気。和洋選ぶことができますが、今回は和食(写真)をセレクト。祖谷豆腐(いやとうふ)は、岩豆腐とも呼ばれるほど堅くてずっしり、ぎゅっと詰まった大豆の味がします。
チェックアウトは11時なのでのんびり。もう一度ケーブルカーに乗って、渓流の露天風呂に入ってから帰るのがおすすめです。
(*データ)
「ホテル祖谷温泉」ほてるいやおんせん
- 住所 徳島県三好市池田町松尾松本367-28
- 電話番号 0883-75-2311
- 料金 おひとり様1泊2食付29,850円~(2名1室利用時・サービス料込、入湯税150円別)、「展望風呂付客室・天籟」は44,150円~(2名1室利用時・サービス料込、入湯税150円別)
- 公式サイト https://www.iyaonsen.co.jp/
(*著者プロフィール)

いしい ひろこ●旅行作家・温泉ビューティ研究家。年間200日ほど国内外の温泉を旅する。雑誌や新聞などに旅コラムを書き、テレビ・ラジオにも出演。温泉や食、自然環境を通じて美しくなる“ビューティツーリズム”を研究。杏林大学温泉療養学兼任講師、国際中医師、日本温泉科学会代議員、日本温泉気候物理医学会会員、カリスマ温泉ソムリエ。著書に『感動の温泉宿100』(文藝春秋)、『新・温泉ビューティ』(グリーンキャット)ほか。https://www.onsenbeauty.com/
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