Web限定連載
温泉ソムリエが選ぶ! 身も心もいやされる「旬の湯宿」
Vol.17

【秋田県・乳頭温泉郷「鶴の湯温泉」】温泉ファン憧れの秘湯の雪見風呂

温泉

2025/12/05

温泉は、生きている地球の力が詰まった恵みの泉。四季のある美しい日本を訪ねて、その土地ならではの温泉に入り、身も心もいやされる旅へ。“カリスマ温泉ソムリエ” 石井宏子さんが、いまこそ出かけたい旬の湯宿をご紹介します。

ライター
取材・文/石井宏子(旅行作家・温泉ビューティ研究家)
エリア
秋田県

冬は温泉で体の芯まで温まりたい季節。せっかくなら情緒たっぷりな雪見風呂で抜群の人気を誇る秘湯はいかがでしょうか。冬の心身と肌を整えるための温泉選びのポイントは、「温める」「バランスを整える」「血液と水分を巡らせる」の3つですが、今回ご紹介する乳頭温泉郷の「鶴の湯温泉」に湧出する硫黄泉は、これらのポイントを押さえています。白いにごり湯の露天風呂(冒頭写真)からの眺めは風情豊か。とろりとした温泉に浸った後は名物の鍋で温まり、身も心もぽかぽかになる旅へ!

いにしえの時代に誘われるような秘湯

「鶴の湯温泉」(写真)の歴史は、7つの宿がある乳頭温泉郷で最も古く、江戸時代中期からといわれています。茅葺屋根の本陣(写真)は、秋田藩主・佐竹義隆が湯治に訪れていた際に警護をしていた武士が逗留していた場所。この建物が、現在でも食事や宿泊の場所として使われています。囲炉裏の火やランプの明かりに心いやされる一夜は、忘れられない旅の思い出になることでしょう。

露天風呂や内湯を巡ってぽかぽかに温まる

ほとんどのゲストは最初に露天風呂(写真)へまっしぐら! たとえ雪が降っていても、とにかく露天風呂をめざします。なぜならば、鶴の湯の露天風呂は風景が美しいだけでなく、特別な温泉だから。ぷくぷくと湯船の底から自然湧出している源泉は、まさに地球から生まれたばかり。そんな新鮮な温泉に入れる場所なのです。冒頭の写真は鶴の湯を象徴する冬の露天風呂ですが、こちらは混浴。にごり湯で、湯のなかは見えないため、皆さん和気あいあいと入浴しています。もうひとつ同じくらいの大きさの女性専用の露天風呂もあり、足元から湧く生まれたての温泉が楽しめます。源泉は4種類あり、別々の湯小屋の内湯で入り比べができるのもうれしいポイント。 
泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉など、硫黄を含む源泉ですが、成分の濃さやバランスが違うため、感触や色などの微妙な違いを楽しみながら巡ることができます。硫黄の血行促進作用で、体内の血液も水分もぐるぐる巡らせて、塩化物泉で体の芯まで温まり、炭酸水素塩泉で肌をなめらかに。乳頭温泉のもつ力を借りて、体を整えていきましょう。「中の湯」(写真)は、湯の花が舞うつるりとした感触の温泉で、炭酸ガスも豊富に含んでいるため体の芯からぽかぽかに。

夕暮れどきは露天風呂にもランプが灯る

日が陰りはじめると、スタッフは館内のランプをすべて回収し、夕暮れどきに向けて入念な準備を始めました(写真)。宿の情景を一層輝かせる灯油ランプは、そのガラス部分が毎日ピカピカに磨かれています。ガラスを丁寧に拭きあげた後、炎が美しく見えるよう芯をカットしたら準備完了です。館内の照明もあえて裸電球にこだわっているので、廊下まで情緒たっぷり(写真)。こうした演出が、ゲストにいやしをもたらしています。

豊かな自然がもたらす山の恵み

夕食の膳には山の恵みが満載(写真は一例)。ほんのり甘めの味付けがほっとするゼンマイの炒めもの、あきたこまち米の団子と具を揚げたきのこあんかけ、つるつるナメコの酒蒸しはほろ苦の菊花がアクセント、八幡平ポークときのこのホイル焼きはバター風味。いぶり人参やいぶりがっこの漬物で、あきたこまちのごはんも進みます。鶴の湯名物の「山の芋鍋」(写真)は緑豆でつくる味噌仕立て。地元神代産の山芋は、すりおろした際の粘りの強さが特徴です。提供する直前に山芋100%の団子を鍋に投入し、もちもちに仕上げます。豚バラ肉でコクを出し、ささがきごぼう、ブナシメジ、エノキダケ、ネギ、そして大量のセリが入っており、これ一杯でごちそう級のおいしさ。ブナ酵母で作られた秘湯ビールや鶴の湯オリジナルの純米酒と一緒に味わうのがおすすめです。 
しんしんと冬の夜は更けていき、寝る前にもう一度温泉で温まって、布団へダイブ。これぞ秘湯の温泉の幸せです。

   

(*データ)

乳頭温泉郷 「鶴の湯温泉」

にゅうとうおんせんきょう 「つるのゆおんせん」

  • 住所 秋田県仙北市田沢湖田沢先達沢国有林50
  • 電話番号 0187-46-2139
  • 料金 おひとり様1泊2食付11,150円~(2名1室利用時・消費税込・入湯税150円別 ※冬期間(10月~5月。気温により変動あり)は1部屋につき1,320円の暖房費が加算されます。
  • 公式サイト https://www.tsurunoyu.com/ 

   

(*著者プロフィール)

いしい ひろこ●旅行作家・温泉ビューティ研究家。

年間200日ほど国内外の温泉を旅する。雑誌や新聞などに旅コラムを書き、テレビ・ラジオにも出演。温泉や食、自然環境を通じて美しくなる“ビューティツーリズム”を研究。杏林大学温泉療養学兼任講師、国際中医師、日本温泉科学会代議員、日本温泉気候物理医学会会員、カリスマ温泉ソムリエ。著書に『感動の温泉宿100』(文藝春秋)、『新・温泉ビューティ』(グリーンキャット)ほか。

https://www.onsenbeauty.com/

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