Web限定連載
温泉ソムリエが選ぶ! 身も心もいやされる「旬の湯宿」
Vol.12

【山形県・赤湯温泉「山形座 瀧波」】“毎日が特別メニュー”の美食温泉宿

温泉

2025/02/07

温泉は、生きている地球の力が詰まった恵みの泉。四季のある美しい日本を訪ねて、その土地ならではの温泉に入り、身も心もいやされる旅へ。“カリスマ温泉ソムリエ”石井宏子さんが、いまこそ出かけたい旬の湯宿をご紹介します。

ライター
取材・文/石井宏子(旅行作家・温泉ビューティ研究家)
エリア
山形県

旅をしないと出合えないのが、その土地に湧く温泉と、地域を味わうごちそう。今回ご紹介する山形県・赤湯温泉「山形座 瀧波(たきなみ)」は、 “生まれたての十割源泉”(源泉100%)を堪能してもらえるよう、館内すべての温泉をかけ流しにしています。また、宿のダイニング「1/365」は“今、ここでしか”がコンセプトで、毎日が特別メニュー。宿のある置賜(おきたま)盆地の旬の素材を、料理人が目の前で仕上げるライブキッチンスタイルで楽しめます。

庄屋屋敷に北欧家具という斬新なくつろぎ

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ロビーがある母屋「毘龍軒(びりゅうけん)」は、いまから約400年前に上杉家の山守を務めた大庄屋の曲がり屋を移築してリノベーションしたもの。杉板の床に設置された薪ストーブや、アルネ・ヤコブセンのスワンチェアが迎えてくれます。フリーフローのドリンクコーナーでは、果実王国山形らしく、高品質のストレート果汁100%ジュース「山形代表」シリーズをはじめ、生豆のセレクトから自家焙煎までこだわりが光る山形市のオーロラコーヒーやクラフトビールを楽しむことができ、夜にはさらにウイスキーや日本酒なども加わります。

蔵をモダンに改装した温泉付きの部屋に泊まる

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山形座 瀧波は、全室に専用の温泉を備えています。今回宿泊した部屋「KURA02」は、蔵を改装したメゾネットスタイル(写真)で、上階にベッドルームがあります。庭のテラスには蔵王石をくりぬいた露天風呂(写真)があり、湯船の底から注ぎ入れる熱い源泉で湯の鮮度を保つよう工夫されています。湯船のなかの温度は、注ぎ入れる源泉の量を調節することで適温にするため、加水・加温の必要がありません。そのため十割源泉を可能にしているのです。滞在中は何度でも自由気ままに温泉に入れるというのは、このうえない幸せです。

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男女別大浴場も同様に十割源泉のかけ流しで、心地よく入れるよう適温に調整されています。泉質は、含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉でとろりとやわらかな感触。浸かってみると、ふわっと漂う硫黄の香りにいやされます。硫黄成分で血行が促進され、塩分がベールのように肌に被膜をつくるので入浴後もポカポカとした温かさが持続します。

劇場レストランで置賜の恵みを存分に楽しむ

ダイニングはオープンキッチンをコの字型に囲むカウンター。ディナーは宿泊者全員が同じ時間に席に着きます。始まりは宿からのふるまい酒です。シニアソムリエの久松 茂(ひさまつしげる)氏が、微発泡スパークリングワイン「小姫〇(こひめあわ)」の説明をしてから、一人ひとりに注いで回ります(写真)。

醸造元である「酒井ワイナリー」は赤湯温泉街にあり、1892(明治25)年の創業。東北最古のワイナリーといわれています。このスパークリングワインは自然農法で育てた山形県産デラウエアを、発酵途中で瓶詰めした無濾過のもの。しっかりとした果実味が美味です。三陸のヤリイカは旬のフェンネルとともに。フェンネルは、“生”、“マリネ”(写真)、“さっと火入れしたもの”の3種が用意され、それぞれ異なる味わいでヤリイカのとろけるうまみを堪能できます。 

活気あふれるキッチンと地域のストーリー

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中川 強(つよし)シェフ(写真左)が率いる瀧波のディナーは、刻々と変わる置賜の旬を大切にしているので、毎日が特別メニューとなっています。お品書きにはシリアルナンバーのような数字で「351/366」(2024年はうるう年で366日あり、この日は351日)と書かれています(写真)。シェフとスタッフの見事な連携のなか、料理人が目の前でひと皿を仕上げ、スタッフが置賜盆地の食材や料理のストーリーを語り、まるで劇場にいるかのような気分で料理を楽しませてくれます。

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お品書きの下には、共演者として、生産者や商店の名前がずらりと記載されています。地元名産である庄内のハタはオカヒジキと(写真)。ジューシーなハタとシャキシャキした食感のオカヒジキは抜群の相性です。山形名物の舟形マッシュルームは楽しい演出で登場しました。薄切りにした生の舟形マッシュルームを花びらのように仕上げたタルトと、食感を残してミンチにした熱々のクロケッタが、まるでデザートのように可愛らしく仕上がっています(写真)。

うまみが詰まった米沢牛内モモ肉のグリル

オープンキッチンの鉄板で仕上げるメインの米沢牛内モモ肉のグリル(写真)は、肉本来のうまみが口いっぱいに広がる逸品。庄内浜の塩、東根市の大富(おおとみ)農産のワサビ、高畠町(たかはたまち)の黒ニンニクペーストと、山形県産の調味料や薬味で味を変化させながら楽しめるひと皿です(写真)。

付け合わせの「よっぱらい白菜」が合いの手になって、ついつい肉のおかわりまで進んでしまいます。芳醇(ほうじゅん)で力強い高畠ワイナリーの赤ワイン「青おに」を合わせて肉のうまみを存分に味わい、最後は炊きたての土鍋ごはんに肉をオン・ザ・ライス。 

豊かな味わいを生む魔法の盆地へ

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翌朝は、宿が毎日開催し、宿泊者が無料で参加できる朝ツアーの「山形座 瀧波の山遊び」に参加し、 置賜盆地が見渡せる絶景スポットへ(写真は夏)。置賜盆地はかつて大きなカルデラ湖だったそうで、眼下に見える白竜(はくりゅう)湖はその名残り。四方をぐるりと高い山に囲まれているため土地に栄養が集まり、寒暖差が大きい気候が食材をおいしくしてくれることから“魔法の盆地”と呼ばれています。

(*データ)

「山形座 瀧波」やまがたざ たきなみ

  • 住所 山形県南陽市赤湯3005
  • 電話番号 0238-43-6111
  • 料金 おひとり様1泊2食付48,000円~(2名1室利用時・サービス料込、入湯税150円別)
  • 公式サイト https://yamagata-the-takinami.com/

   

(*著者プロフィール)

いしい ひろこ●旅行作家・温泉ビューティ研究家。年間200日ほど国内外の温泉を旅する。雑誌や新聞などに旅コラムを書き、テレビ・ラジオにも出演。温泉や食、自然環境を通じて美しくなる“ビューティツーリズム”を研究。杏林大学温泉療養学兼任講師、国際中医師、日本温泉科学会代議員、日本温泉気候物理医学会会員、カリスマ温泉ソムリエ。著書に『感動の温泉宿100』(文藝春秋)、『新・温泉ビューティ』(グリーンキャット)ほか。https://www.onsenbeauty.com/

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