舌をうならせる“美食の湯宿”
石川県・山代温泉「あらや滔々庵」
温泉
2023/10/06
温泉は、生きている地球の力が詰まった恵みの泉。四季のある美しい日本を訪ねて、その土地ならではの温泉に入り、身も心もいやされる旅へ。“カリスマ温泉ソムリエ”石井宏子さんが、いまこそ出かけたい旬の湯宿をご紹介します。

- 取材・文/石井宏子(旅行作家・温泉ビューティ研究家)

- 石川県
四季のある日本は、美食の宝庫でもあります。季節ごとの美しい風景を楽しみ、旬があるからこそ味わえる“おいしいもの”との出合いも旅の醍醐味です。美食の湯宿としてぜひご紹介したいのは、石川県の山代温泉にある「あらや滔々庵(とうとうあん)」。海の幸、山の幸、川の幸、里の幸と、加賀の豊かな食文化が感じられる美食を四季折々に味わえます。
これから旬を迎える北陸の味覚といえばズワイガニです。なかでも、一度食べたら忘れられないのが、とれたての活蟹を使った焼き蟹(冒頭写真)。炭火の七輪でほどよく火入れした蟹の身にそのままかぶりつき、さらに能登の塩とすだちで甘みを引き立たせ、最後は蟹味噌をたっぷりつけて、とろけるようなうまみを楽しみます。ブランドを示す“青タグ”を付けられた「加能ガニ」は、県内の漁港で11月6日に漁が解禁され、翌年の3月20日まで水揚げされます。とことん味わい尽くすなら蟹料理のコースで


ズワイガニをたっぷり味わいたいなら、蟹料理のフルコース「タグ付きずわい蟹プラン」(写真)を。雌の蟹の「香箱(こうばこ)ガニ」が先付け、そして雄の加能ガニをフレッシュな身が花開くお造り、うまみと香りが秀逸な焼き蟹、身の詰まった蟹の身の甘さを存分に味わえるゆで蟹で満喫し、フィナーレには「蟹雑炊」の登場です。料理の器は、九谷焼や山中塗など地元作家のものや、宿ゆかりの「北大路魯山人の写し」、ときには先祖代々の年代物などが用いられ、その美しさも料理とともに楽しめます。
“せっかくなので蟹以外にも加賀の旬の幸を楽しみたい”というときは、「焼き蟹」か「茹で蟹」のコースのどちらかを選ぶのがおすすめ。香箱ガニの前菜、加賀料理の八寸やお造り、加能ガニと、まさにいいとこ取り(写真)で堪能できます。山代温泉の湯を預かって 18代目の老舗旅館
山代温泉の開湯は725(神亀2)年。まもなく1300年を迎えます。霊峰白山(はくさん)へ向かう行基(ぎょうき)上人が、紫色にたなびく雲へ向かっていくと、一羽のヤタガラス(三本足の霊鳥)が傷をいやしているのを見つけ、源泉を発見したと伝えられています。あらや滔々庵は、創業から380年余りの老舗旅館です。前田利治(としはる)公が藩主の時代に、初代荒屋源右衛門(あらやげんえもん)が、源泉湯壺の鍵を預かる役目を拝命し、当主の永井隆幸さんで18代目。風格ある玄関(写真)では、北大路魯山人の衝立(ついたて)とおかみたちの笑顔が迎えてくれます。

客室は、半露天風呂付きの和洋室や、前田家ゆかりの特別室、山庭へ進むと隠れ家のような一軒家の離れがあります。写真は半露天風呂が付いた「九谷(くたに)」の部屋。数寄屋造りの落ち着いた空間にモダンチェアのテラスが印象的で、部屋専用の温泉は、吉野檜の湯船で源泉かけ流しです。
滔々と注がれる源泉かけ流しの大浴場


館内にはふたつの大浴場と特別浴室「烏湯(からすゆ)」があり、すべて源泉かけ流しです。泉質は、ナトリウム・カルシウム—硫酸塩・塩化物泉、弱アルカリ性。やわらかな湯に包み込まれるような感触が心地よく、肌がしっとり潤う美人の湯です。大浴場のひとつ「瑠璃光」の内湯(写真)は、深めの湯船にたっぷりと源泉が満たされ、湯の新鮮さと力強さを感じます。併設の露天風呂で涼風を浴びて、再び内湯へ……。湯の匂いと木の香りを楽しみながら、じっくり入浴するのがおすすめです。特別浴室「烏湯」(写真)は、和のメディテーション(瞑想)をテーマにしたいやしの湯。暗めの照明とぬるめの湯、立ち込める温泉のミストで“憂き世を忘れる”時を過ごせるでしょう。
湯元ならではの名物「源泉たまご」の朝食
宿の玄関に引かれた64℃の源泉に、毎日夜明け前から仕込み、数時間かけて作る「源泉たまご」(写真)。このたまごが食べられる朝食(写真)が、宿のもうひとつの名物です。ぷっくりとした源泉たまごを口へと運べば、濃厚な黄身がふんわりとろけて、温泉の香りがコクとなって追いかけてきます。まさに主役となる逸品。旅先ならではの手間暇をかけた朝食で至福の時間を過ごした後は、九谷焼の窯跡や温泉寺など、静かな環境の周辺を散歩して、ゆっくり過ごしてみてはいかがでしょうか。
(*データ)
山代温泉「あらや滔々庵」 やましろおんせん「あらやとうとうあん」
- 住所 石川県加賀市山代温泉18-119
- 電話番号 0761-77-0010
- 料金 おひとり様1泊2食付44,000円~ ※「タグ付きずわい蟹プラン」は11/8~3/31のみ予約可、おひとり様1泊2食付64,900円~(2名1室利用時・サービス料込・入湯税150円別)
- 公式サイト https://www.araya-totoan.com/
(*著者プロフィール)

いしい ひろこ●旅行作家・温泉ビューティ研究家。年間200日ほど国内外の温泉を旅する。雑誌や新聞などに旅コラムを書き、テレビ・ラジオにも出演。温泉や食、自然環境を通じて美しくなる“ビューティツーリズム”を提唱。杏林大学温泉療養学兼任講師、国際中医師、日本温泉科学会代議員、日本温泉気候物理医学会会員、カリスマ温泉ソムリエ。著書に『感動の温泉宿100』(文藝春秋)ほか。https://www.onsenbeauty.com/
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