Web限定連載
温泉ソムリエが選ぶ! 身も心もいやされる「旬の湯宿」
Vol.14

【群馬県・上牧温泉「辰巳館」】客室専用の温泉露天風呂とサウナで“ととのい旅”

温泉

2025/06/06

温泉は、生きている地球の力が詰まった恵みの泉。四季のある美しい日本を訪ねて、その土地ならではの温泉に入り、身も心もいやされる旅へ。“カリスマ温泉ソムリエ”石井宏子さんが、いまこそ出かけたい旬の湯宿をご紹介します。

ライター
取材・文/石井宏子(旅行作家・温泉ビューティ研究家)
エリア
群馬県

いつ行っても、何度行っても、また泊まりたいと思う宿があります。群馬県・上牧(かみもく)温泉の「辰巳館」もそんな宿のひとつです。2024年にリニューアルされた新客室がとにかくすごいのです。広いデッキに源泉かけ流しの温泉露天風呂とプライベートサウナ、みなかみの水風呂。これが客室専用なのですから、まさに一夜の温泉パラダイスではないでしょうか。やわらかに寄り添うような心地よい温泉に加えて、炭火で焼き上げる「いろり献残(けんさん)焼」のおいしさも、ふと思い出しては恋しくなります。

2024年に誕生したプライベートサウナ付きの新客室

ダミーイメージ

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2024年のリニューアルで誕生した新客室のうち3室がプライベートサウナ付き。部屋から広いテラスへ出ると、源泉かけ流しの露天風呂と水風呂、そして、プライベートサウナがあります(冒頭写真は111号室)。「すごい! これが客室専用?!」と、見ただけでワクワクしてしまいます。広くて深めの湯船に源泉かけ流し、湯船のなかの隠れた場所に熱交換装置が設けられていて、いつ入っても心地よい温度に保たれているこだわりの造りに感激です。プライベートサウナは、フィンランドの「HARVIA(ハルビア)」社製(写真)で好みの温度に調整することができるし、みなかみ町の蒸留所で作られたアロマウォーターを使ってセルフロウリュを楽しむこともできます(写真)。温泉やサウナで温まったら、水風呂へどぼん。利根川源流のみなかみ町といえばまろやかな軟水の水源地で“首都圏の水がめ”。その水を使った水風呂の後は、デッキチェアでの外気浴で“ととのう”仕上げを。これらがすべて自分専用の場所にあり、自由気ままに過ごせるのはこのうえない幸せです。

ダミーイメージ

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111号室(写真)は落ち着ける和空間のリビングと、厚さのあるマットレスをローベッドに仕立てた寝室で構成。ミニバーが充実していて、オリジナルブレンドのコーヒー豆をその場で挽いてドリップできるよう電動ミルやドリッパーが揃っています(写真)。地酒やワインなど(有料)も冷蔵庫にぎっしり入っているので、湯あがり後も部屋のなかで自由自在にくつろげるのが魅力。わが城のごとく温泉パラダイスを満喫できます。

山下 清画伯の貼絵を大壁画にした「はにわ風呂」

大浴場の「はにわ風呂」(写真)も必見です。まず注目なのは、群馬県から出土したと伝わる埴輪をモチーフにした湯口。そしてさらなるいやしをもたらす大壁画の元となったのは、山下 清画伯がこの温泉のために貼絵で描いた『大峰沼と谷川岳』です。砕いたガラスを使って制作された大壁画を眺めながら温泉に浸かっていると、ほのぼのと心まで温かくなってきます。大壁画の右下には山下画伯本人も後ろ姿で登場しているので、この大浴場に入る機会があれば、ぜひ探してみてください。泉質は、ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉、pH7.9の弱アルカリ性で、肌をしっとりと潤わせて体をぽかぽかと温めてくれる温泉です。

炭火で味わう香ばしい「いろり献残焼」

宿の名物料理に、炭火で焼きながら楽しむ「いろり献残焼」(写真)があります。高貴な方に献上した御膳に残った物のおすそ分けという意味で、鰻、鮎、伊達鶏、和牛などを山里の幸とともに少しずつ串に刺して焼き上げます。また、この地はかつて上杉家と武田家の戦いが長く続いたといわれる地域で、武士たちが川魚や山菜を剣先に刺し、焚火で焼いて食していたことから「けんさき焼き」がなまって「けんさん焼」になったという説もあります。

ダミーイメージ

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囲炉裏はほとんどがテーブル席にリニューアルされて、ゆったりと椅子に腰かけて食事を楽しめます。炭火でじっくり焼きながら、前菜や川魚のお造り(写真)などをつまみに地酒をちびちびと。炭火で焼くと、どうしてこんなにおいしくなるのでしょうか。鰻は、表面がカリカリで、中身がふっくらとした状態に焼けてきたら、刷毛でタレを塗りながら仕上げて、熱々をハフハフといただきます。鮎(写真)はじっくり焼いて、串に刺したままかぶりつくのがおすすめと仲居さんに教えていただき、武士の気分でむしゃむしゃと味わいます。伊達鶏も和牛も肉厚シイタケもアスパラガスも、と夢中になって楽しんで、〆は焼きおにぎり。表面にたっぷりと塗った味噌が焼ける香ばしい匂いに誘われて、おなかいっぱいと思っていても、つい最後までおいしくいただいてしまいました。

部屋に戻ってひと休みをしたら、また、のんびり自分だけの温泉の世界に浸りましょう。

(*データ)

上牧温泉 「辰巳館」かみもくおんせん 「たつみかん」

  • 住所 群馬県利根郡みなかみ町上牧2052
  • 電話番号 0278-72-3055
  • 料金 おひとり様12食付14,300円~(21室利用時・サービス料込、消費税・入浴税150円別)、温泉・サウナ付き登竜館111号室(74㎡)おひとり様1泊2食付39,600円~(21室利用時・サービス料・消費税込、入湯税150円別)
  • 公式サイト https://www.tatsumikan.com/

(*著者プロフィール)

いしい ひろこ●旅行作家・温泉ビューティ研究家。

年間200日ほど国内外の温泉を旅する。雑誌や新聞などに旅コラムを書き、テレビ・ラジオにも出演。温泉や食、自然環境を通じて美しくなる“ビューティツーリズム”を研究。杏林大学温泉療養学兼任講師、国際中医師、日本温泉科学会代議員、日本温泉気候物理医学会会員、カリスマ温泉ソムリエ。著書に『感動の温泉宿100』(文藝春秋)、『新・温泉ビューティ』(グリーンキャット)ほか。

https://www.onsenbeauty.com/

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