【フランス】シュリー-シュル-ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷
旅行
2026/08/21
地球の鼓動が伝わってくるようなダイナミックな自然遺産、太古から現代まで、人の営みを物語る文化遺産。ユネスコの世界遺産のなかから、一度は見てみたい魅力あふれる世界遺産をご紹介します。

- 文/佐道眞左 写真/富井義夫

- フランス
「フランスの庭」と呼ばれる風光明媚な土地が流域に広がる、ロワール川。川沿いに王侯貴族たちが築いた、中世の華麗な古城と周囲の自然が織り成す優美な景観が、訪れる人を魅了している。
川と人が作り出した美しき文化的景観

フランス南部の中央山塊に源を発し、中部のオルレアン、トゥール、アンジェ、ナントなどを経て大西洋へと注ぐロワール川は、全長1000キロメートルを超える、フランス最長の川。
川沿いに大西洋から吹き込む風の影響で、中〜下流域は温暖な気候に恵まれ、古くから人々が暮らしてきた。肥沃な大地では農業が盛んになり、中世前期からは王侯貴族が競うように、ロワール川やその支流の両岸に贅を尽くした城を建てた(写真はアンボワーズ城)。
芸術作品に描かれてきたロワール渓谷

パリから南へ車で2時間ほどのシュリー-シュル-ロワールから、フランス西部のシャロンヌ-シュル-ロワールまで、ロワール川中〜下流域の約280キロメートルにわたる広大なエリアには、現在も300以上の古城が点在している。17世紀以降、風光明媚なロワール渓谷の景観は、画家のターナーなど多くの芸術家に愛され、その作品に描かれてきた。
1981年にはロワール渓谷に立つ城のなかで最大級のシャンボール城(写真/アフロ)が、「シャンボールの城と領地」として単独で世界文化遺産に登録。その後2000年に、シャンボール城も含んだロワール川中〜下流の広大な地域が、「シュリー-シュル-ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷」として拡大登録された。ロワール渓谷は、ロワール川と人々の営みが約2000年にわたって築き上げた文化的景観であり、中世からルネサンス期の城や庭園、歴史的な街並み、農地やブドウ畑といった美しい風景が調和し、現代まで残されていることが評価されたためだ。
ルネサンス様式が美麗なシャンボール城

河畔の美しい森に古城が点在する景観は、まるで童話の世界のよう。トゥールやブロワなどを拠点に、古城巡りを楽しみたい。
必ず訪れたいのはロワール渓谷最大級を誇るシャンボール城(写真)。ドメーヌ(領地)の面積約5440ヘクタール、部屋の数400室以上という巨大さは圧倒的だ。遠征先のイタリアで華麗なルネサンス文化の影響を受けた国王フランソワ1世の命により、狩猟用の離宮として築かれたのが始まりで、1519年に着工。フランソワ1世の死後は荒廃と修復が繰り返された。ルネサンス様式の特徴をよく備えた城で、城内ではレオナルド・ダ・ヴィンチの設計ともいわれる、人がすれ違わずに昇降できる二重らせん階段がみものだ。18世紀に完成したフランス式庭園は、修復プロジェクトによって2017年に見事よみがえった。
歴史エピソードと建築美に浸る古城の旅


ロワール川の支流・シェール川に浮かぶように立つ、優美な姿のシュノンソー城(冒頭写真)もぜひ訪れたい城のひとつ。アンリ2世の愛人だった2代目城主と、アンリ2世の死後3代目城主となった正妻との確執など、さまざまな逸話が伝わる城だ。
ほかにも、ロワール川を見下ろす小高い丘に立つアンボワーズ城、ロワール屈指の美しさと名高いシュヴェルニー城(写真は外観と「武器の間」)など、どの城も個性があり魅力的。ひとつひとつの城に秘められた歴史やエピソードを辿り、古城巡りを堪能しよう。
(*世界遺産データ)
シュリー-シュル-ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷
The Loire Valley between Sully-sur-Loire and Chalonnes
- 登録 2000年/文化遺産
- 所在地 ロワレ県、ロワール=エ=シェール県、アンドル=エ=ロワール県、メーヌ=エ=ロワール県
※本記事は、『J-B Style 26年秋号』(P52~55)を転載しています。















