Web限定連載
美しき世界遺産
Vol.6

【日本】日光の社寺

旅行

2025/10/10

地球の鼓動が伝わってくるようなダイナミックな自然遺産、太古から現代まで、人の営みを物語る文化遺産。ユネスコの世界遺産のなかから、一度は見てみたい魅力あふれる世界遺産をご紹介します。

ライター
文/佐道眞左 写真/山梨勝弘
エリア
日本

奈良時代の開山以来、山岳信仰の聖地として発展した日光山。江戸時代には徳川幕府の聖地として、より信仰を集めるように。日光東照宮(冒頭写真)、二荒(ふたら)山神社、日光山輪王寺(りんのうじ)の二社一寺と日光山内から成る「日光の社寺」は、日光山の自然と豪華な社寺建築が調和して、比類なき神聖な空間を作りあげている。

山岳信仰の霊場として発展

栃木県北西部の日光は、男体(なんたい)山の別名・二荒山の「二荒」を音読みした「にこう」が地名の由来とされる。男体山、女峰(にょほう)山などの日光連山は古代より信仰を集めていたが、勝道(しょうどう)上人が766(天平神護2)年に男体山を拝むために草庵(後の四本龍寺(しほんりゅうじ))を結んだのが、聖地・日光山のはじまりといわれている。上人が山内に入る際、神様が現れ大谷(だいや)川に蛇を放ったところ、そ
の蛇が橋になったと伝わるのが、日光の表玄関・神橋(しんきょう)(写真)だ。上人は784(延暦3)年に日光山の神々を祭る社殿と神宮寺を建立。以後、山岳信仰の霊場として日光山は発展した。12世紀末ごろには東国武士団の信仰を集め、鎌倉幕府開府後は関東を鎮護する霊場として栄えたものの、一時衰退。1613(慶長18)年に徳川家康公の帰依を受けた天海(てんかい)大僧正が、日光山復興に尽力する。 

緻密な彫刻群に圧倒される壮麗な霊廟(れいびょう)

江戸時代に入り、徳川家康公が、死後は日光山に自らを神として祭るよう遺言したことにより、日光は大きな転機を迎える。1616(元和2)年に家康公が生涯を閉じると、遺体は静岡市の久能山(くのうざん)に埋葬された後、翌年、日光山に竣工した東照社に移され「東照大権現」という神として祭られた。当初社殿は質素だったが、3代将軍家光公が「寛永の大造替」を実行。一流の技術者を集め、美術・工芸・建築技術の粋を集めた極彩色の壮麗な社殿を造替した。本社は拝殿と本殿が石の間で結ばれた権現造り。絢爛豪華な陽明門は人物や霊獣などの数多の彫刻で飾られ、見る者を圧倒する。東回廊の蟇股(かえるまた)にある彫刻で、名工・左甚五郎(ひだりじんごろう)の作といわれる『眠り猫』(写真)、神厩舎(しんきゅうしゃ)の欄間の彫刻『三猿』( 写真)はあまりに有名だが、龍の顔の下で拍子木を打つと、龍が鳴いているような甲高い音が鳴り響く本地堂(薬師堂)の龍の天井画『鳴龍』や、1636(寛永13)年にオランダの東インド会社から奉納されたもので、上部の徳川家の葵紋が上下逆さにあしらわれてしまっている「廻転燈籠」、実際に象を見たことがない狩野探幽が下絵を描いた上神庫の『想像の象』の彫刻など、見逃したくないみどころが満載だ。

家康を敬愛する家光の霊廟

祖父である家康公を敬愛した家光公。その死後は遺言に従い、家康公を祭る日光東照宮の近くに造営された仏教様式の霊廟・大猷院(たいゆういん)(写真)に葬られた。一般的に寺院は南向きに建てられることが多いが、大猷院は家康公への敬意を表し、本殿や拝殿は東照宮の方角(北東)に向けて建てられている。また、東照宮を手本にした権現造りながらも、東照宮をしのいではならないという遺志に従い、東照宮よりやや控えめな装飾で、漆黒を基調に蒔絵(まきえ)や金箔の繊細な意匠が施されている。

神仏習合の聖地から二社一寺へ

明治維新で神仏分離が行われると、それまで神仏習合の聖地だった日光山は日光東照宮、二荒山神社(写真)、輪王寺(当時は満願寺)の二社一寺に分けられ、大猷院や三仏堂(写真)も輪王寺の所属となった。東照宮が造営され、徳川幕府の聖地となる前は日光山内の中心だった二荒山神社。現在の本殿は、2代将軍秀忠公が1619(元和5)年に再建したものだ。一方、勝道上人により創建された四本龍寺は810(弘仁元)年に満願寺の寺号
を受け、1613(慶長18)年に天海が中興。1655(明暦元)年に輪王寺と改称した。本堂である三仏堂は平安時代初期に慈覚大師により創建されたもので、日光三山が仏となった本地仏を祭る。日光山内で最大の木造建築物である現在の建物は1647(正保4)年に造営された。山や森を神として祭る日本古来の信仰がいまも生き続けている点、社寺建築は江戸時代の最高の美術・工芸・建築技術の粋を集めたものである点などが評価され、日光の社寺は1999年に世界文化遺産に登録された。信仰の歴史と、神聖な山々や杉の巨木などの自然、圧倒的な装飾美の社寺建築が一体となった日光山の濃密な宗教的空間が、訪れる人を魅了する。

(*世界遺産データ)

日光の社寺
Shrines and Temples of Nikko

●登録 1999年/文化遺産
●所在地 栃木県日光市

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