Web限定連載
美しき世界遺産
Vol.9

【日本】白川郷・五箇山の合掌造り集落

旅行

2026/01/16

地球の鼓動が伝わってくるようなダイナミックな自然遺産、太古から現代まで、人の営みを物語る文化遺産。ユネスコの世界遺産のなかから、一度は見てみたい魅力あふれる世界遺産をご紹介します。

ライター
文/佐道眞左 写真/富井義夫
エリア
日本

飛騨高地の烏帽子岳(標高約1625m)に源を発する庄川(しょうがわ)。その谷沿いの3つの集落――白川郷(岐阜県白川村)の荻町(おぎまち)(写真)と、五箇山(ごかやま)(富山県南砺(なんと)市)の相倉(あいのくら)・菅沼(すがぬま)は、平家の落人伝説が語り継がれる山深い地。掌を合わせたような形の三角屋根が特徴の合掌造り家屋が数多く残り、民話の世界を彷彿させるたたずまいを見せている。道路が整備された現在では簡単に行けるようになったが、かつてはアクセスが非常に困難で“最後の秘境”とも呼ばれてきたエリアだ。

山深い豪雪地に残る三角屋根の集落

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急峻な山々に囲まれた豪雪地帯で、雪に閉ざされてしまうと、庄川を船で行き来するか徒歩でしか交通の術がなかった地域では、独自の文化が育まれてきた。なかでも特徴的なのは合掌造り家屋だ。その数が最も多かった19世紀末には1850棟ほどあった合掌造り家屋は、ダム建設や高度経済成長など社会情勢の変化により激減。集落の景観を保っているのは、荻町、相倉(写真)、菅沼(写真)のみとなってしまった。現在荻町集落には114棟、相倉集落には20棟、菅沼集落には9棟の合掌造り家屋が残る。合掌造り家屋は、日本でも庄川周辺の地域でのみ見られる独特なもの。荻町・相倉・菅沼の3集落はそれぞれ大規模・中規模・小規模の集落の代表例として歴史的な景観をいまに伝える貴重な存在である。こうした点が評価され、この3集落は「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として、世界文化遺産に登録された。

ブルーノ・タウトもたたえた合理的建築

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合掌造り家屋の屋根(写真)は日本の茅葺き民家としては珍しい切妻造り(本を伏せたような形の三角屋根)。約60度と傾きが急なため、積もった雪が落ちやすく、後述する養蚕用に広い屋根裏部屋を造ることもできた。上階の大きな窓からは、蚕を育てるのに必要な太陽の光と風をたっぷり取り入れられる。また、荻町集落の家々(写真)は三角形の壁面(妻面)を同じ方向に向けて立つものが多いが、これは谷からの風の

抵抗を最小限に抑え、風通しをよくするためや、屋根面を東西に向けることで日光が屋根に均等に当たり、雪が解けやすく屋根を乾きやすくするためなどの理由から。ドイツ出身の著名な建築家・都市計画家であるブルーノ・タウトは、1935(昭和10)年にこの地を訪れている。彼は、著書『日本美の再発見』のなかで合掌造り家屋について「建築学上合理的であり、かつ論理的である」と賞賛し、その景観をスイスにもたとえて世に知らしめた。

大家族の暮らしと生業

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耕作地の規模が限られていた白川郷・五箇山では、農耕に加え、林業や養蚕、塩硝作りを生業(なりわい)としてきた。周囲から隔絶された集落は、他藩などの目にふれずに火薬の原料となる塩硝を作るのに好適だった。江戸時代に加賀藩の所領であった五箇山では米の代わりに塩硝を年貢として納めたが、五箇山に遅れて、白川郷でも塩硝作りが行われたと考えられている。囲炉裏端の床下に掘られた穴に蚕のフンやヨモギなどを積み上げて発酵させた塩硝土を用いて、塩硝作りが行われていたという。また、白川郷・菅沼などでは、明治末ごろまで大家族制が営まれていた。正式な結婚が認められたのは家長とその長男のみ。世代をまたいだ親族や使用人を合わせて数十人が合掌造り家屋の1階部分に暮らし、その上の屋根裏部屋(写真は白川郷和田家)は2~4層に仕切られ、蚕の飼育や食料の貯蔵に使われた。大広間の囲炉裏(写真は白川郷和田家)から出る煙には防腐・防虫効果があり、屋根裏の木材をいぶして乾燥させるため、建物を長もちさせるのにも役立った。

厳しい環境が育んだ強い絆

厳しい環境下では人々の結束が固く、家どうしが協力し合って生活を営んできた歴史がある。白川郷(写真)・五箇山には、江戸時代から続く「結(ゆい)」という組織があり、田植や草刈り、雪かきなどさまざまな場面で村人が助け合って暮らしてきた。30~40年ごとに行われる茅葺き屋根の葺き替えも、近年は労働力不足のため職人に依頼することが多いが、屋根の古い茅を取り除き、新しい茅を葺く作業を、村人が協力して行う場合もある。雪に覆われる冬、花々に彩られる春、田んぼの稲の緑にいやされる夏、稲穂のはさ掛けや紅葉が美しい秋など、白川郷・五箇山は四季それぞれに風情満点。集落ごとに年に何回か実施されるライトアップでは、幻想的な夜景を楽しめる(白川郷のライトアップイベント入場は完全予約制)。集落を訪ね、この土地の暮らしから生まれた知恵と文化を体感したい。

※白川郷では、レスポンスビル・ツーリズムに取り組んでいる。詳細は下記ウェブサイトを参照。
https://www.vill.shirakawa.lg.jp/srt/
※事前に白川郷の混雑予想や渋滞情報を発信する情報サイト「白川郷すんなり旅ガイド シラカワ・ゴーイング(SHIRAKAWA-Going)」を確認のうえ出かけよう。
https://shirakawa-going.jp/

 

(*世界遺産データ)

白川郷・五箇山の合掌造り集落
Historic Villages of Shirakawa-go and Gokayama

●登録 1995年/文化遺産
●所在地 岐阜県大野郡白川村、富山県南砺市

 

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