Web限定連載
城郭ライターが教える! いま行きたい「ニッポンの名城」
Vol.1

震災を乗り越えて天守閣復旧 緑萌える「熊本城」

歴史

2024/05/10

城を見れば、日本がわかる――昔から、城はその土地の歴史の起点になり、城下町は文化を育んできました。数多ある全国の城のなかから、城郭ライターの萩原さちこさんが、この時期に訪れたいおすすめの名城と“ツウな”みどころを教えます。

ライター
取材・文/萩原さちこ(城郭ライター) 写真/岡 泰行(城郭カメラマン)
エリア
熊本県

風薫る5月、心地よく城歩きが楽しめるシーズンの到来。連載第1回は、新緑に映える壮大な石垣が美しい、熊本城をご紹介したい。
熊本城は、築城の名人である加藤清正(かとうきよまさ)の傑作だ。2016(平成28)年4月の熊本地震で大きな被害にあったが、着々と復旧が進んでいる。復旧完了時期は2052年度とかなり先だが、2021(令和3)年3月には天守閣が復旧し、5年ぶりに内部が見学できるようになった。

見ごたえ抜群! リニューアルした天守閣

ダミーイメージ

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実際に天守閣を訪れてみると、想像以上に見ごたえがあり驚いた。内部の展示が大幅にリニューアルされ、かなりの充実度だ。天守の構造や特徴はもちろん、築城時の情勢、地形の特徴、河川の改修や城下町形成の過程、加藤氏の後に城主を務めた細川氏時代の歴史などを、テーマごとに時系列で解説(写真)。ジオラマや天守の模型(写真)、映像なども駆使し、とてもわかりやすい。最上階の展望フロアから見渡せる、緑豊かな熊本の町並みもいい。

別の時期に積まれた? 大・小天守台の石垣

ダミーイメージ

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熊本城の天守は、大天守と小天守が続櫓(つづきやぐら)で繋がれた連結式だ。しかし、その土台となる石垣(写真)は、実は別の時期に積まれたことが判明している。城内の石垣は7期の築造時期に大別され、大天守台は2期(加藤清正1599〜1600(慶長4〜5)年ごろの築造)、小天守台は4期(清正の息子、2代藩主・加藤忠広(ただひろ)1611〜1624(慶長16〜寛永元)年ごろの築造)と考えられる。つまり、清正・忠広による親子合作である可能性が高いのだ。
小天守台の隅角部は、直方体の長辺と短辺を交互に積んで強度を高めた「算木(さんぎ)積み」。また、石材は加工され、横に目地を通して積まれている。一方、大天守台の隅角部に積まれた石材は立方体に近く、不整形で横に目地も通っていない。大きく異なるのは勾配で、小天守台が根元から急角度で少しずつ反り返るのに対して、大天守台の根元は緩やかで、石垣の中間辺りから大きく反り上がる(写真)。違いを比較すると面白い。

期間限定! 特等席から眺める「二様の石垣」

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熊本城のみどころのひとつ、新旧2期の石垣が共存する珍しい「二様(によう)の石垣」も、おそらく清正と忠広の合作だろう。復旧期間限定で特別見学通路が設置されており(写真)、いまなら石垣をこれまでとは違う視点から眺めることができる。
ちなみに、大天守台や二様の石垣に見られる勾配のある高石垣は、“清正流石垣” “扇の勾配”と呼ばれ、熊本城の代名詞となっている。約45度の緩やかな傾斜で始まり、空に向かって反り返るように、最上部がほぼ垂直に立ち上がる。

地震にも耐え抜いた、現存する「宇土櫓」

ダミーイメージ

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残念ながら、城内に残る13棟の重要文化財建造物はすべて被災してしまった。しかし、宇土櫓(うとやぐら)(写真)は崩壊を免れ、まるで不撓不屈(ふとうふくつ)の熊本人の精神を象徴するかのように、いまも力強く立っている。
宇土櫓は、三重五階地下一階。“第三の天守”と呼ばれる、天守に匹敵する規模と意匠を誇る大きな櫓だ。清正が最初に入城した古城(隈本(くまもと)古城)に創建した天守を移築したという説もあり、そうなれば天守より築造年代は古い。櫓の下にそそり立つ、全国トップクラスの高石垣も圧巻だ。
しばらくは解体保存工事のため素屋根で覆われているが(写真)、解体までは特別公開日が設定され、そのようすを間近で見ることもできる。復旧工事により新しい発見もあるのだろうか。いずれにしても、熊本地震をも生き抜いた宇土櫓は、熊本の新たな宝になるだろう。再びその姿を見る日が待ち遠しい。

 

(*データ)

「熊本城」くまもとじょう

  • 住所 熊本県熊本市中央区本丸1-1
  • 電話番号 096-223-5011
  • 営業時間 9:00AM~4:30PM(最終入園)
  • 休み 12/29~31(変更の可能性あり)
  • 料金 大人800円
  • 公式サイト https://castle.kumamoto-guide.jp

   

(*著者プロフィール)

萩原さちこ(はぎわら さちこ)●城郭ライター、編集者。城旅デザインラボ代表、城組代表、日本城郭協会理事。執筆業を中心に、講演、メディア・イベント出演などを行う。著書に『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『城の科学〜個性豊かな天守の「超」技術』(講談社ブルーバックス)、『地形と立地から読み解く「戦国の城」』(マイナビ出版)、『日本の城語辞典』(誠文堂新光社)、『日本100名城と続日本100名城めぐりの旅』(ワン・パブリッシング)など。https://46meg.com/

 

 

 

(*写真家プロフィール)

写真/岡 泰行(おか やすゆき)●城郭カメラマン。大阪市在住。1994年から城の撮影を開始。先人たちの知恵とおしゃれ心をテーマに、写真を通して日本の城の魅力を探る。大坂城豊臣石垣の発掘ならびに保存工程の撮影にも携わる。全日本写真連盟「全日本お城写真コンテスト」審査委員⾧。「お城めぐりFANhttps://www.shirofan.com/)」主宰。

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