【会津若松城(鶴ヶ城)】東北随一の石垣と赤瓦の天守
歴史
2026/01/09
城を見れば、日本がわかる――昔から、城はその土地の歴史の起点になり、城下町は文化を育んできました。数多ある全国の城のなかから、城郭ライター萩原さちこさんが、この時期に訪れたいおすすめの名城と“ツウな”みどころを教えます。

- 取材・文/萩原さちこ(城郭ライター) 写真/岡 泰行(城郭カメラマン)

- 福島県
会津若松城(別名:鶴ヶ城)(冒頭写真)の歴代城主は、蒲生氏郷(がもううじさと)、上杉景勝(かげかつ)、保科正之(ほしなまさゆき)、松平容保(まつだいらかたもり)と、錚々(そうそう)たる顔ぶれだ。戊辰(ぼしん)戦争では、壮絶な籠城戦の末に開城したという歴史もある。東北地方では珍しく天守が立ち、高い石垣で囲まれた城であるのは、豊臣秀吉の命令により家臣が築いた重要な城だったから。今回は、その特徴と魅力をご紹介しよう。
秀吉政権による東北支配拠点として誕生

会津若松城を築いたのは、秀吉の家臣であった蒲生氏郷だ。1590(天正18)年に実質的な天下統一を果たした秀吉は、東北地方の領土裁定(奥州仕置)を行い、南奥州の最大勢力だった会津の蘆名(あしな)氏が拠点を置いていたこの地を重視し、信頼する氏郷に任せた。氏郷は会津若松城の前身である黒川城を大改造して、“東北初”の天守がそびえる、総石垣の城を誕生させた(写真は現在)。秀吉流最新鋭の城は東北最大規模を誇り、当時の天守は七重だったという説もある。のちに会津若松城からは、秀吉が有力家臣だけに使用を許可したとされる金箔瓦や、秀吉ゆかりの桐紋瓦が見つかっている。秀吉政権における東北の支配拠点として重視されていた物的証拠といえよう。氏郷は城下町を整備して、地名を黒川から若松へ改称。わずか3年ほどで、現在の会津の基盤をつくりあげた。
江戸時代に大改修、ふたつの時期の石垣が残る


1639(寛永16)年、会津若松城は加藤明成(かとうあきなり)により現在の姿に大改修されている。現在、城内で見られる石垣は、明成により積まれたものがほとんどだ。そのため、蒲生時代と加藤時代のどちらの時代の石垣かが、城内での鑑賞時のポイントとなる。天守台は、築城時に蒲生氏郷が築いたもの(写真)。勾配が緩く、自然石を積んだ「野面(のづら)積み」で、1611(慶長16)年の大地震でも崩壊しなかった堅牢さを誇る。一方、城内一の高さがある本丸東面の石垣(写真)は、加藤明成が改修したもの。急傾斜で、隙間なく積まれた「打込接(うちこみはぎ)」となっている。
天守や櫓、表門の屋根が赤い理由は?


本丸に立っている天守(写真)は、明成が建てた天守をモデルにして、1965(昭和40)年に復元されたもの。戊辰戦争で約1ヵ月間砲弾を浴びながらも倒壊しなかった天守は、1874(明治7)年に破却。現在は取り壊し直前に撮影された古写真などをもとに外観が復元されている。天守をはじめ、天守から連なる続櫓、表門(鉄門)、南走(みなみはしり)長屋、干飯櫓(ほしいやぐら)(写真)などの屋根瓦が赤いのは、瓦にかけられた釉薬によるものだ。冷え込みの厳しい会津では、一般的な黒い土瓦では凍み割れてしまう。そこで、鉄分入りの釉薬を施釉することで、耐久性を高めている。釉薬の配合はさまざまに試行錯誤され、釉薬の改良とともに赤色も少しずつ変化したという。現在の赤色は、出土した瓦の蛍光X線分析の結果などから、幕末の色が再現されている。
戊辰戦争で威力を発揮した防御力


城内は、縄張(設計)や攻撃設備もみどころだ。秀逸な設計を実感できるのは、正面にあたる北出丸(写真)と大手門付近である。北出丸は大手門の前線基地で、北出丸前面の大腰掛、本丸の北隅櫓跡、伏兵曲輪(くるわ)の三方向から敵を狙い撃ちできる設計になっている。実際に戊辰戦争では、官軍は北出丸からの射撃で大手門に近づけなかったという。面白いのは、現在は西出丸が駐車場として活用されていることだ。入出庫しにくく、虎口(こぐち)を突破して城内に侵入することの難しさを体感できる(写真)。明治維新後まで本丸に残っていた「御三階(ごさんかい)」が、移築されているのが市内の阿弥陀寺。阿弥陀寺には戊辰戦争の戦死者が埋葬されており、御三階の隣には新撰組の斉藤一の墓もある。あわせて訪れるのがおすすめだ。
(*城DATA)
会津若松城(鶴ヶ城)
あいづわかまつじょう(つるがじょう)
- 住所 福島県会津若松市追手町1-1
- 電話番号 0242-27-4005(鶴ヶ城管理事務所)
- 営業時間 8:30AM~4:30PM(最終入場)※夜間ライトアップあり
- 休み 無休
- 料金 大人410円(天守閣・麟閣共通券大人520円)※現金のみ
- 公式サイト https://www.tsurugajo.com/
※掲載内容は、2025 年12 月時点の情報です。時期や天候、施設・店舗の諸事情により
変更となる場合があります。
※価格は消費税込。
(*著者プロフィール)

萩原さちこ(はぎわらさちこ)●城郭ライター、編集者。城旅デザインラボ代表、城組代表、日本城郭協会理事。執筆業を中心に、講演、メディア・イベント出演などを行う。著書に『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『城の科学〜個性豊かな天守の「超」技術』(講談社ブルーバックス)、『地形と立地から読み解く「戦国の城」』(マイナビ出版)、『日本の城語辞典』(誠文堂新光社)、『日本100名城と続日本100名城めぐりの旅』(ワン・パブリッシング)など。https://46meg.com/
(*写真家プロフィール)

岡 泰行(おか やすゆき)●城郭カメラマン。大阪市在住。1994年から城の撮影を開始。先人たちの知恵とおしゃれ心をテーマに、写真を通して日本の城の魅力を探る。大坂城豊臣石垣の発掘ならびに保存工程の撮影にも携わる。全日本写真連盟「全日本お城写真コンテスト」審査委員⾧。「お城めぐりFAN(https://www.shirofan.com/)」主宰。










