【竹田城】雲海に浮かぶ幻想的な“天空の城”
歴史
2025/11/07
城を見れば、日本がわかる――昔から、城はその土地の歴史の起点になり、城下町は文化を育んできました。数多ある全国の城のなかから、城郭ライター萩原さちこさんが、この時期に訪れたいおすすめの名城と“ツウな”みどころを教えます。

- 取材・文/萩原さちこ(城郭ライター) 写真/岡 泰行(城郭カメラマン)

- 兵庫県
雲海に浮かぶ“天空の城”として知られる竹田城(兵庫県朝来(あさご)市)。9月中旬~12月初旬の早朝、気象条件により標高353.7mの古城山(こじょうざん)山頂に残る石垣が雲海から頭を出す(冒頭写真)。その幻想的な姿をひと目見ようと、全国から多くの人が訪れる人気の城だ。絶景のみならず、山上に累々と残る石垣は全国でも貴重なものである。今回は、その魅力と特徴をご紹介しよう。
夜明けとともに現れる幻想的な姿

秋の早朝、古城山山頂に神秘的な世界が開けてくる。夜明け前の張りつめた空間に、まるで空に浮かんでいるかのように、竹田城を雲海が取り巻くのだ(写真)。雲海の正体は、城の東側を流れる円山(まるやま)川から発生する朝霧。雲ひとつない晴天の日、夜間にぐっと気温が下がると、発生率が高まる。日中に温められた空気が夜になって冷やされ、水温よりも低くなったとき、川面から水蒸気が発生して霧となり立ち上る。
竹田城が雲海に浮かんで見えるのは、視界を遮るものがない山上にあるから。敵を監視する役割も担う城にとって、これは大切な要素。城のある風景が絵画のように美しく、また城からの眺望が抜群であるのも当然である。
国境を見渡す街道の交差点


竹田城の始まりは、但馬(たじま)(兵庫県北部)守護の山名氏と播磨(はりま)(兵庫県南西部)守護の赤松氏の衝突がきっかけ。この地は、但馬、播磨、丹波(たんば)(京都府中部、兵庫県北東部、大阪府北部)の交通の要衝。播磨の姫路から但馬・丹波方面へ北上する街道と、但馬・丹波の2国を縦断する街道の交差点にある(写真は上空から見た城下町。左手が竹田城のある古城山)。竹田城からは丹波との国境が見え、鳥取方面に通じる街道も見渡せる。
国境という立地に加え、竹田城から15㎞ほど南にある生野(いくの)銀山(写真)の存在も忘れてはならない。織田信長の命令で但馬へ侵攻した羽柴(豊臣)秀吉がこの地を押さえた理由のひとつと考えられるのが、生野銀山の掌握だ。竹田城から直径20㎞圏内には生野銀山のほか直轄鉱山が集中しており、財政資源として絶対的な価値があったと考えられる。信長自身も早い段階から生野銀山を重要視していたとみられ、1600(慶長5)年の関ヶ原の戦いの後には江戸幕府が直轄としている。
織田・豊臣系の特徴がみられる最新鋭の城


竹田城の価値は、大きくふたつある。ひとつは、土の城から石の城への変遷期に最高峰の技術で築かれた城であることだ。竹田城の石垣は、同時期に積まれた石垣と比較しても量が膨大で、かつ技術力が高い。石垣を積んだのは、1585(天正13)年に入城した赤松広秀。秀吉の支援を受け、信長が起用した石工・穴太(あのう)衆が手がけたとされる。
また、縄張(設計)の特徴からも、秀吉との関わりが推察できる。枡形虎口(ますがたこぐち)(写真)や喰違(くいちがい)虎口を多用し、くまなく横矢がかけられた技巧的な設計は、織田・豊臣系の城の特徴といえる。山頂の天守台(写真)を中心に、三方向に向けて尾根上に曲輪(くるわ)が段層的に広がり、要所に櫓(やぐら)台を配置。周囲に堀切や竪堀(たてぼり)などの防備装置を効率的に置いて防御性を高めている。
趣ある野面積みの石垣がみどころ


もうひとつの価値は、江戸時代に修復されることなく終焉を迎えた奇跡的な城であることだ。広秀は関ヶ原の戦いで西軍に従属した後に東軍へ移るも、徳川家康の怒りを買い、切腹。竹田城は城主不在となり、徳川幕府の直轄領となって400年以上の時を超えた。全国の城は、関ヶ原の戦いの後に新たな城主が改修したり、廃城となったりするケースがほとんどだ。江戸時代に改修の手が入っていない竹田城の石垣は、全国的に見ても稀少性がある。
もちろん近年に修復された石垣もあるが、その存在感にはきっと圧倒されることだろう。大小さまざまな石材を組み合わせて積んだ野面(のづら)積みの石垣をはじめ、城内の石垣(写真)は独特の美がある。未発達な隅角部の「算木(さんぎ)積み」(写真)も古めかしく味がある。その趣を存分に感じてみてほしい。
なお、雲海に浮かぶ天空の城に出合える時間帯は、明け方から午前8時ごろ。9月中旬~12月初旬の日夜の寒暖差が激しい日が狙いめだ。気象条件によるため運次第だが、それもまた、出合えたときの感激を高めてくれる。寒さ対策や事前の情報収集を万全にして出かけよう。
(*城DATA)
竹田城
たけだじょう
- 住所 兵庫県朝来市和田山町竹田古城山169
- 電話番号 079-674-2120(情報館 天空の城)
- 営業時間 5:00AM~5:00PM(3~5月 8:00AM~6:00PM、12月初旬~1/3 10:00AM~3:00PM) ※最終登城は各30分前まで
- 休み 1/4~2月末閉山
- 料金 大人500円 ※現金のみ(クレジットカード不可)
- 公式サイト https://www.city.asago.hyogo.jp/site/takeda/
※掲載内容は、2025 年10 月時点の情報です。時期や天候、施設・店舗の諸事情により
変更となる場合があります。
※価格は消費税込。
(*著者プロフィール)

萩原さちこ(はぎわらさちこ)●城郭ライター、編集者。城旅デザインラボ代表、城組代表、日本城郭協会理事。執筆業を中心に、講演、メディア・イベント出演などを行う。著書に『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『城の科学〜個性豊かな天守の「超」技術』(講談社ブルーバックス)、『地形と立地から読み解く「戦国の城」』(マイナビ出版)、『日本の城語辞典』(誠文堂新光社)、『日本100名城と続日本100名城めぐりの旅』(ワン・パブリッシング)など。https://46meg.com/
(*写真家プロフィール)

岡 泰行(おか やすゆき)●城郭カメラマン。大阪市在住。1994年から城の撮影を開始。先人たちの知恵とおしゃれ心をテーマに、写真を通して日本の城の魅力を探る。大坂城豊臣石垣の発掘ならびに保存工程の撮影にも携わる。全日本写真連盟「全日本お城写真コンテスト」審査委員⾧。「お城めぐりFAN(https://www.shirofan.com/)」主宰。










