Web限定連載
城郭ライターが教える! いま行きたい「ニッポンの名城」
Vol.8

【今帰仁城】沖縄の青い海を見下ろす壮大なグスク

歴史

2025/07/04

城を見れば、日本がわかる――昔から、城はその土地の歴史の起点になり、城下町は文化を育んできました。数多ある全国の城のなかから、城郭ライター萩原さちこさんが、この時期に訪れたいおすすめの名城と“ツウな”みどころを教えます。

ライター
取材・文/萩原さちこ(城郭ライター) 写真/岡 泰行(城郭カメラマン)
エリア
沖縄県

世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」を構成する9つの資産には、5つのグスクが含まれている。首里城、中城(なかぐすく)城、座喜味(ざきみ)城、勝連(かつれん)城、そして今帰仁(なきじん)城(冒頭写真)だ。なかでも、那覇市から約85km、沖縄美ら海水族館から程近い沖縄本島北部・今帰仁村にある県内最大級のグスク「今帰仁城」は、壮大な石塁と見事な絶景で人気を博している。その魅力をご紹介しよう。

沖縄地方の城「グスク」とは?

グスクとは、奄美群島から沖縄諸島、宮古島、八重山群島などの島々で300以上確認されている城のこと。明治維新まで琉球王国として繁栄した歴史をもつ沖縄は、文化も独自の発展を遂げている。グスクもそのひとつで、本州や四国・九州などの城とはデザインもあり方も一線を画す。御嶽(うたき)(写真)と呼ばれる祭祀の場や拝所の聖域などがあり、信仰の場も兼ねた独特の構造をしている。

グスクは、按司(あじ)と呼ばれる地方領主が地域の支配拠点として築いたとみられている。按司たちが抗争を繰り返し、14世紀から15世紀初頭にかけて3つの勢力が拮抗する三山時代(北山、中山、南山)が到来。これを1429年に統一し、琉球王国の国王となったのが、中山の尚巴志(しょうはし)だった。

ため息が出るほど美しい石塁と絶景

今帰仁城は、尚巴志が倒した北山王の居城だった。10の郭から構成される広大なグスクで、石塁が波のようにうねりながら累々と積まれている。全長約1.5kmにわたるこの壮大な石塁は、北山王が築いたようだ。北山の滅亡後も、今帰仁城には琉球王府から監守(役人)が派遣され、1609年に薩摩軍に攻められるまで存続した。

今帰仁城のある本部(もとぶ)半島は東シナ海に突き出しており、今帰仁城は半島北端の海岸からわずか800mほどの標高約100 mの高台にある。そのため、最高所からはグスクを取り巻く石塁と、その向こうにライトブルーとインディゴブルーのツートンカラーの海を見渡せる(写真)。躍動感ある石塁と青い海の共演は時を忘れるほど美しく、グスクを吹き抜ける風も心地よい。

今帰仁城の学術的な評価

ダミーイメージ

ダミーイメージ

今帰仁城は、学術的にも価値が高い。その理由のひとつは、グスクを囲む外郭の石塁やその外側に置かれた出城らしき跡、ハンタ道(写真)と呼ばれる登城道、人々が暮らした集落跡に至るまで、広範囲にわたり残存し、グスクの全体像や当時の人々の営みがうかがえることだ(写真は今帰仁ノ口殿内火之神の祠)。

もうひとつは、北山王が現在の姿に改修する以前の姿も確認されていること。発掘調査によると、主郭では9層が確認され、大きく4時期の改変を経て13世紀末ごろから17世紀前半まで機能していたことがわかっている。この地は貿易船のルート上にあり、朝貢貿易が行われる以前から地方領主が拠点として機能させていた可能性がある。

グスク特有の美しい石塁

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なめらかなカーブを描く石塁が、とにかく美しい。琉球石灰岩が積まれたグスク特有の石塁だが、よく見ると、首里城や中城城とは質感や色が異なる。同じ石灰岩なのだが、沖縄本島内の多くのグスクで用いられているものとは違う、やや黒く表面のキメが粗い古期石灰岩が積まれているのだ。

とくにおすすめなのは、御内原(うーちばる)から見下ろす景色。一段下の大隅(うーしみ)には高さ7~8mの石塁が積まれている。主郭東側の石塁(写真)も見事だ。グスクの石塁は本州の城の石垣に比べて控え(奥行き)が少ないのが特徴だが、今帰仁城の石塁はひときわ少なく、積み木のように小ぶりな石をそのまま積み上げたような様相をしている。しかも、今帰仁城内の石塁はいずれも73~80度の急勾配。ほぼ方形の小さな石材が精巧に積み上げられていて、それが約600年も崩れずに残っていることに感動してしまう。
往時の栄華に思いを馳せて巡ってみてはいかがだろう

 

(*物件紹介)

今帰仁城跡

なきじんじょうあと

  • 住所 沖縄県国頭郡今帰仁村今泊5101
  • 電話番号 0980-56-4400
  • 営業時間 8:00AM~7:00PM(1~4月、9~12月 ~6:00PM) ※最終入城は各30分前
  • 休み 無休
  • 料金 大人600円(9/1からは大人1,000円)
  • 公式サイト https://www.nakijinjoseki-osi.jp/

 

※掲載内容は、2025 年7月時点の情報です。時期や天候、施設・店舗の諸事情により変更となる場合があります。※価格は消費税込。

        

        (*著者プロフィール)

    萩原さちこ(はぎわら さちこ)●城郭ライター、編集者。城旅デザインラボ代表、城組代表、日本城郭協会理事。執筆業を中心に、講演、メディア・イベント出演などを行う。著書に『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『城の科学〜個性豊かな天守の「超」技術』(講談社ブルーバックス)、『地形と立地から読み解く「戦国の城」』(マイナビ出版)、『日本の城語辞典』(誠文堂新光社)、『日本100名城と続日本100名城めぐりの旅』(ワン・パブリッシング)など。https://46meg.com/

     

        (*写真家プロフィール)

    写真/岡 泰行(おか やすゆき)●城郭カメラマン。大阪市在住。1994年から城の撮影を開始。先人たちの知恵とおしゃれ心をテーマに、写真を通して日本の城の魅力を探る。大坂城豊臣石垣の発掘ならびに保存工程の撮影にも携わる。全日本写真連盟「全日本お城写真コンテスト」審査委員⾧。「お城めぐりFANhttps://www.shirofan.com/)」主宰。

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