カナダ・メープル街道とケベックの教会
旅行
2024/10/18
カナダの象徴カエデ(メープル)の名を冠する旅のルートがある。日本では「メープル街道」、現地では「ヘリテイジ・ハイウェイ*1」として知られ、オンタリオ州とケベック州を繋ぐ全長約800キロメートルの街道だ。北米の木々が色づく秋、カナダ建国の歴史とそのルーツに関わる教会や文化を探る魅惑の旅に出かけよう。
*1:ヘリテイジ・ハイウェイ=歴史的街道

- 取材・文/芦原千里 写真/小川佳世子 コーディネート/Valerie Harvey 協力/カナダ観光局、Destination Ontario, Niagara Falls Tourism, Tourisme Laurentides, Destination Québec Cité, Citadelle de Québec
- オンタリオ州(カナダ) 、 ケベック州(カナダ)
“圧巻のスケール”メープル街道の紅葉
英語圏のオンタリオ州とフランス語圏のケベック州を繋ぐ「ヘリテイジ・ハイウェイ」は、カナダ建国にまつわる史跡が点在し、世界中の旅人を魅了する人気の旅ルート。一方で、街道沿いに広がる広葉樹林の紅葉は名高く、日本では「メープル街道」として知られている。
街道の起点には、世界三大瀑布のひとつ、ナイアガラの滝(写真)がある。この名所の秋の眺めはまた格別だ。空に立ちのぼる水煙と滝の轟音(ごうおん)、氷河期に形成された絶壁など、大迫力の景観を紅葉が美しく染めあげる。地上や船上からの眺めもよいが、上空からの景色は圧巻だ。「ナイアガラヘリコプターズ」の約10分間の遊覧飛行で、よりダイナミックな景観を楽しみたい。
トロントを経由して北東へ。すっかり色づいた木々に囲まれながら、国道11号と60号を車で4時間ほど走ると見えてくる美しい紅葉の地は「アルゴンキン州立公園」(写真)だ。1893年に制定されたオンタリオ州最古の州立公園で、アウトドア好きに人気がある。東京都の面積の約3.5倍にもなる敷地には、2400以上の池や湖があり、なだらかな地表を覆う紅葉が続くさまは、広大な自然のキャンバスに描かれた絵画のようだ。
さらに北をめざし、首都オタワを経てリゾートとして名高い「ローレンシャン高原」(写真)へ。標高が高く、メープル街道では真っ先に紅葉が始まる地点だ。高原内のリゾート、モン・トランブラン・ビレッジには欧風の建物が軒を連ね、朱(あか)く色づいたカエデとのコントラストはまるで絵ハガキのよう。道を歩けばフランス語が耳に飛び込んでくる。“北米のパリ”と呼ばれるモントリオールやケベックシティにも近く、いよいよ街道の終点が近づいてきたと感じた。
「ケベックシティ」―秋の紅葉に彩られる 北米唯一の城塞都市
ケベックシティ(冒頭写真)は、その旧市街歴史地区がユネスコの世界文化遺産に登録されており、植民地時代のフランス文化が随所に感じられる美しい城塞都市*2。セントローレンス川のほとりは情緒にあふれ、街歩きにはうってつけだ。秋になると街は見事な紅葉に染まり、その景観をひと目見ようと、多くの旅人が訪れる。
また、フランス入植時代の影響で建てられた美しい教会も、秋の景観を引き立てている。アッパータウンにある「ノートルダム大聖堂」(写真)は、“ケベコワ(ケベックの人々)”が心の拠り所としている教会で、街の歴史の理解を深めるうえでも、ぜひ訪れておきたい場所だ。
かつて毛皮の交易所があったロワイヤル広場には、フランス国王ルイ14 世の胸像とともに、1688年創設の「勝利のノートルダム教会」がある(写真)。1690年に仏軍が英国艦隊に勝利して以来、それを祝ってこの名で呼ばれるようになったという。
城壁の外側には現代的な街並みが広がり、とくにサン・ジャン・バティスト地区は買い物や散策に最適だ。地元で人気のチョコレート店「エリコ」で休憩すれば、ちょっとしたローカル気分が味わえる。
*2:城塞都市=周囲を城壁で防御した都市
現代に受け継がれる ケベックの美食と文化
旧市街にある「ラ・ブティック・ド・ノエル・ド・ケベック」(写真)は、クリスマスグッズ専門店。地元作家による魅力的なオーナメントがところ狭しと並べられ、おみやげ選びにぴったりだ。買い物の後は、プチ・シャンプラン通りへ。小道の両側には小粋なブティックやカフェが連なり、昼夜問わず華やいでいる。その一角にはウサギ料理*3で有名な「ル・ラパン・ソテ」(写真)がある。味わい深いパテや煮込み料理は、地元産のワインと一緒に。
*3:ケベックの郷土料理
より伝統的なケベック料理を食べるなら、植民地時代の趣を残す「オ・ザンシャン・カナディアン」(写真)へ。フランスの美食文化を受けて発展した郷土料理が、心と体にしみわたる。
食後は、歩いて「フェアモント・ル・シャトー・フロントナック」(写真/冒頭写真)へ。歴代著名人の定宿としてはもちろん、映画やドラマにも登場する有名なホテルだ。格式ある老舗での滞在は、旅をより思い出深いものにしてくれる。
※本記事は、『J-B Style24秋号』(P36~45)を転載しています。