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北海道・富良野 北の大地の“個性派”ワイナリー

旅行

2024/06/14

“北海道のへそ”富良野には、自治体が運営する醸造所や、ヤギと共に育まれたブドウ畑など、個性的なワイナリーが点在する。周囲を山々に囲まれ、盆地特有の寒暖差を利用して造られる高品質なワインを味わいに、夏の北海道へ。

ライター
取材・文/土井ゆう子 写真/秋田大輔
エリア
北海道

設立52周年を迎えた 「ふらのワイナリー」

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東に十勝岳連峰、西に夕張山地芦別岳(あしべつだけ)を望む富良野は、盆地特有の気候で、日中と朝晩の温度差が大きく、日照時間も長い。そのおかげで糖度の高いブドウができる、醸造用ブドウの栽培に適した地だという。市街地北側にある「ふらのワイナリー」(写真)は、1972(昭和47)年に「富良野市ぶどう果樹研究所」として設立された市営ワイナリー。富良野市内で収穫されたブドウのみを使い、富良野の工場で醸造し熟成させるルールのもと、ワイン造りの歴史を紡いできた。

赤レンガ造りのワイナリーの前にはラベンダー畑、その隣にはブドウ畑が広がり、訪れる人を迎えてくれる。館内は見学自由で、地下にはステンレスタンクと樽が並べられた熟成室(写真)があり、発酵を終えたワインが静かに瓶詰めの時を待っている。貯蔵スペースの一角には歴代のワインや試作品がストックされ、積み重ねられた時間を感じることができる。

大地の恵みを味わう 唯一無二の食の世界へ

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ふらのワイナリーでは、研究用を含め約50種類のブドウを栽培。そのうちの約20種類を使用してワインを製造している。単一品種のワインと、ブレンドしたワインがあり、多彩な醸造が「ふらのワイン」の特徴のひとつとなっている。まずは試飲をして、お気に入りを見つけたい。
丘の上の「ふらのワインハウス」(写真)では、ふらのワインを味わいながら地元食材を生かした料理が楽しめる。

看板メニューは「富良野チーズ工房」のチーズを使い、パンの器で供されるチーズフォンデュ(写真)。エゾ鹿肉ステーキも人気があり、ジビエに合う「羆(ひぐま)の晩酌」とのペアリングを楽しみたい。

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宿泊は、野菜ソムリエプロの資格をもつ夫婦が営む「Auberge erba stella(オーベルジュエルバ ステラ)」(写真)へ。動物由来の食品不使用の料理を提供し、野菜は農薬・肥料を使わずに栽培した自家菜園のものと、仲間のオーガニック生産者のものを使用している。
「コース仕立てのディナーでは、野菜とハーブ、果物を、さまざまな調理法で50〜80種類使っています(写真)。普段は肉や魚、乳製品など動物性の食品を食べている方でも、野菜が本来もつ豊かな味を感じられるので、きっと満足していただけると思います」と語るオーナー夫妻。富良野の澄んだ空気と“食べる”ということに丁寧に向き合う非日常のひとときを満喫しよう。

富良野のテロワールを 表現するブドウ栽培

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温暖化が進む昨今、北海道は冷涼な気候と恵まれた環境で、ブドウを育てるのに最適な条件が揃う地域として関心が高まり、新しいワイナリーが増えている。中富良野町に“サステナブル”なワイン造りを標榜(ひょうぼう)する、「ドメーヌレゾン」(冒頭写真)が設立されたのは2016年のこと。山梨県勝沼町にある老舗醸造所のグループ会社で、ここではヤギを飼ってエコロジカルなワイン造りをめざしている(写真)。
「元気に走り回るヤギたちは、雑草を食べ、その排泄物は剪定した葉っぱと混ぜて堆肥として畑に戻します。有機質の肥料を使うことで、土中の微生物が盛んに活動できる環境を作り、その土で育ったブドウでワインを造ります。ヤギたちの健康を考え、農薬を極限まで減らしています」と教えてくれたのはマネージャーの菊池優子氏。健康なヤギからとれるミルクは加工し、カフェでソフトクリームやパフェとして販売。ワイン造りで出たブドウの搾りカスは、ヤギの餌に。まさに持続可能な循環型農業なのだ。

別棟のワイン工場は、先進的な瓶詰ラインやタンク室、樽貯蔵室などを、予約不要で自由に見学することができる。なかでも壮観なのが、ジャケットタンクと呼ばれる温度管理機能付きのステンレスタンクと、昔ながらのバスケットプレス機が並ぶタンク室(写真)。初仕込みは2019年という新しいワイナリーならではの勢いが感じられる。
現在、シャルドネ、ツヴァイゲルトレーべ、ソーヴィニヨン・ブラン、ケルナーなど11種類のブドウを栽培。

併設のブティック(写真)では、ブドウの個性が感じられる単一品種のワイン13種類を、テイスティングシートを参考に無料で試飲できる。どれを購入しようかとあれこれ悩むのも、楽しみのひとつだ。

大自然が育む地元の おいしいものたち

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ワインと合うチーズをおみやげにしたいと立ち寄ったのが「富良野チーズ工房」だ。ここには毎朝、市内の牧場で搾乳された生乳が運ばれ、約65度の低温で約30分かけてゆっくりと殺菌される。低温殺菌することでクリーミーかつ濃い牛乳になり、これを使ってチーズを作っている(写真)。館内ではイカ墨入り白カビタイプのチーズ「セピア」や、ふらのワインの赤を練り込んだ「ワインチェダー」などを無料で試食できる。牛乳やチーズを使ったソフトクリームも販売しているので、ぜひ味わってみよう。

すべての製品の原料となる牛乳のおいしさに驚くはずだ。
施設内にはピッツァ工房(写真)もあり、富良野産の小麦粉をブレンドした生地に、富良野チーズ工房のモッツァレラチーズを使用したピッツァが食べられる。

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富良野の気候はブドウだけでなく、メロンの栽培にも適していて、冷え込む夜に蓄えられる甘さは糖度15度以上になるという。「とみたメロンハウス」(写真)では、厳選した富良野メロンを直売。その場で味わえるカットメロンやスイーツも販売しているので、夏季限定の旬の味をぜひ堪能したい。
ワイナリーで購入したお気に入りのワインを地元の料理と味わうなら、富良野エリアにあるワイナリーのボトルを持ち込める有料サービスBYO(ビーワイオー)を行っている飲食店に出かけよう。

「ふらの家(け)本町酒場(もとまちさかば)」では、釧路町仙鳳趾(せんぽうし)直送の「生カキ」と、炭火で焼きあげた「上富良野ポーク味噌漬け」とのペアリングを(写真)。富良野の大自然に育まれたワインと美味を楽しみたい。

※本記事は、『J-B Style24夏号』(P30~39)を転載しています。

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