新路線開通でさらに注目 物語を探してロンドンの駅巡り
旅行
2024/04/19
鉄道発祥の国、イギリスの首都ロンドンでは実に43年ぶりの新路線となるエリザベス線が2022年に開通し、ロンドン中が沸いた。ヒースロー空港から気軽に30分ほどで市内に入れるとあって、すでに旅行者にも大人気。歴史ある鉄道王国では、鉄道駅とその周辺はつねに興味の尽きないみどころでもある。物語のある駅で美しい鉄道建築を堪能したら、駅周辺のおすすめスポットへ出かけよう!

- 取材・文・写真/江國まゆ

- ロンドン(イギリス)
『ハリー・ポッター』ファンが ホグワーツへ行く駅!


イギリスの鉄道駅で最も有名なのが、この「キングス・クロス駅」(写真)かもしれない。なんといっても世界中にファンをもつ『ハリー・ポッター』シリーズで、魔法使いの生徒たちがホグワーツ魔法魔術学校へと向かう特急が、ここから発車するのだから。
駅には日々ファンが押し寄せ、1階奥にあるプラットフォーム「9と4分の3番線」で記念撮影を行うのが習わし(写真)。しかしなぜ、作者のJ・K・ローリング氏はキングス・クロス駅の9と4分の3番線という設定にしたのだろう。
この駅が選ばれたのは、作者の両親が出会ったスコットランド行き列車が出発した駅というのが理由のひとつだそうだが、実はこの駅周辺は、太古の昔に英国の先住民ケルトの人々と海を渡って侵攻してきたローマ軍が最後に戦った場所といわれている。そしてケルトの民を率いた女王が、ちょうど8番線から10番線の間に埋葬されているという言い伝えがあるのだ。作者は後にこのエピソードを知ったそうだが、偶然とは思えない巡り合わせにロマンを感じる。
『くまのパディントン』の 物語はここから始まった

ペルーからやって来た礼儀正しい子ぐまが、古ぼけたスーツケースとともにブラウン夫妻に発見された場所が「パディントン駅」だ。物語の生みの親であるマイケル・ボンド氏が1950年代当時この駅周辺に住んでいたことから、主人公をパディントンと名付け、駅は瞬く間に世界中に知られる存在に。駅舎や周辺にはパディントンをかたどったアート作品がちりばめられ、「パディントン・トレイル」(写真)を楽しむことができる。


ロンドン万博のパビリオンを模した駅のデザインは流麗なラインが際立ち、現在も数々のドラマの背景として活用されている。駅から南へ30分ほど歩くと、上質なものが大好きなパディントンが目を輝かせそうなメイフェア地区に到着。クラシカルな魅力が詰まった街では、百貨店「セルフリッジズ」を訪ねたり、王室御用達のホテル「クラリッジズ」のレストラン(写真)やカフェでひと休みしたいところ。
テムズ川の両岸にある 珠玉の歴史遺産たち


ロンドン広しといえども、プラットフォームがテムズ川の橋の上にある鉄道駅は「ブラックフライヤーズ駅」(写真)のみだ。中世のドミニコ会修道士の黒衣(ブラックフライヤー)が駅名の由来で、その権力の強大さが伝わってくる。「セント・ポール大聖堂」や元証券取引所を改装したモール(写真)など、重厚な建造物の迫力を感じつつ、金融街「シティ」を抜けて中心部に向かおう。
激しく変わりゆく イーストロンドンを反映

“まるで大聖堂のよう”と形容される駅舎があるとしたら、この「リヴァプール・ストリート駅」(写真)かもしれない。修道院跡に建てられた駅は、高い天蓋とアーチ型の窓、教会の身廊を思わせる列車庫などのデザインで、19 世紀には退廃していた駅周辺を救済するイメージさえある。現在はロンドンのトレンドを牽引するショーディッチ地区にも近く、新しい物語を紡いでいる。
※本記事は、『J-B Style24春号』(P30、P32~37)を転載しています。

