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富良野市の挑戦! 「ふらのワイン」が生まれるまで

旅行

2024/05/24

『J-B Style2024年夏号』の特集「北海道・富良野 北の大地の“個性派”ワイナリー」でご紹介している「ふらのワイナリー」は、富良野市が約50年前に始めた市営ワイナリー。ゼロから始まった「ふらのワイン」誕生の背景には、試行錯誤と熱い想いがありました。

ライター
取材・文/土井ゆう子 写真/ふらのワイナリー(富良野市ぶどう果樹研究所)、秋田大輔
エリア
北海道

1960年代、野山に自生する山ブドウ以外には、ブドウの木が存在しなかったという富良野。いまでは十勝岳連峰を一望できる富良野盆地に、壮大なブドウ畑が広がる(冒頭写真)。ドラマやCMのロケ地、ラベンダーなどの花畑が有名な富良野だが、実はふらのワイナリーの歴史は、それよりもっと古い1972(昭和47)年に始まった。

米に替わる農産品として始まったブドウ栽培

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町村合併により、富良野市が誕生したのは1966(昭和41)年のこと。高度経済成長期のまっただなかで、農家が減少し、過疎化の進行が問題になっていた時代だ。1970(昭和45)年には米の収穫量を抑える減反政策が始まり、米が農家の主要作物だった富良野市では、新しい地場産品の開発が急務だった。
そんななか、富良野の気候がワインの本場・ヨーロッパと似ていることが明らかになる。富良野市は、約500万円の予算で「富良野市ぶどう果樹研究所」を設立(写真)。1972(昭和47)年には醸造用ブドウの栽培を開始し、十勝ワインの開発者である岩野貞雄(いわのさだお)氏を招き、醸造研究への挑戦が始まった(写真)。

試行錯誤の末にオリジナルワインを生み出す

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当時は、石の混じった石礫地(せきれきち)を活用した約1haの土地しかなく、まだ栽培技術も確立されていない状況下で、参考書を見ながらの作業だったという。試行錯誤を重ね、1974(昭和49)年には、山梨のワイン企業の支援を得て、ブドウの仕込みから熟成、製品化に至るまでの指導を受けて、初の試作ワインを完成させた。
果実として食べるブドウの栽培は、房が棚からぶら下がる「棚仕立て」が主流だが、富良野市ではヨーロッパの醸造用ブドウ栽培に倣い、垣根に枝を這わせて栽培する「垣根仕立法(片側水平コルドン)」を採用(写真)。垣根仕立法には、太陽の光を吸収するブドウの葉の面積が棚仕立てより大きくなり、冬には枝が雪のなかに隠れるため寒さからも守られるという利点があった。現在の富良野型栽培方式の基礎が、ここに確立されたのだ。

ワイン工場を設立し、本格操業を開始

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1975(昭和50)年2月。富良野市で開催された冬季国体で、初醸造の試飲用ワイン(720㎖瓶)を1250本提供し、大会関係者から好評を得たという。このときのワインの一部はいまも、ふらのワイナリーの貯蔵用セラーで保管されている(写真)。
また同年に、フランス原産の「セイベル」系2品種を植栽することを決定。その翌年には仕込み、貯蔵、製品化まで一貫生産できるワイン工場を、美しい自然景観に恵まれた現在の立地、清水山の丘に建設し(写真)、自治体運営のワイナリーとして本格操業を開始した。

世界に通用するワインへの成長と新製品開発

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1978(昭和53)年。いよいよふらのワインが、市内の酒販店などで販売開始となった。事業着手11年目の1982(昭和57)年には、国際食品審査機関モンドセレクション主催の「第20回ワールドセレクション」のワイン・スピリッツ部門で、ふらのワインの赤・白が金賞を受賞。味、香りともに本場ヨーロッパ産に劣らない高得点をマークした。
1986(昭和61)年には、富良野市ぶどう果樹研究所付属の「種苗センター」が誕生し、環境に適した独自品種の開発に着手。バイオテクノロジーを駆使した新品種の生育や、温暖化による気候の変化に伴い、いままで気温が低くて栽培できなかったフランスの銘醸ブドウ品種の栽培にも挑戦し、次々と新しいワインがデビューした。赤・白だけではなくブレンドや樽熟成、ロゼやアイスワインなど、ワイン造りに関わる多くの人の熱い想いが結実した多彩なラインアップ(写真)が、ふらのワインの特徴のひとつになっている。

テロワールを生かした次の新しい挑戦へ

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いまでは富良野市を代表する名産品の筆頭となったふらのワインは、富良野市で栽培する醸造用ブドウのみを使用して醸造される。生産農家のサポートから品種選定や品種改良、ブドウの受け入れや加工、醸造、品質管理、販売にも携わるのが富良野市職員だ。
食卓や会合などで、ふらのワインで乾杯する「まずはふらのワインで乾杯条例」の制定や、ブドウの収穫を祝う「ふらのワインぶどう祭り」の開催など、地元愛に満ちた試みも多い。
2022年の創業50周年には記念ワインとして樹齢38年の古木からブドウを収穫し、醸造はブドウの表面についている自然由来の微生物のみで発酵。テロワールをさらに生かす造り方に挑戦している。これから夏に向けて、敷地内のラベンダー園も見ごろを迎える(写真)。手探りでスタートした富良野市のワイン造りは、次の50年に向けて進んでいる。

※参考資料/FURANO WINE 50th Anniversary Memorial Magazine

「ふらのワイナリー(富良野市ぶどう果樹研究所)」ふらのわいなりー(ふらのしぶどうかじゅけんきゅうじょ)
    • 住所 北海道富良野市清水山
    • 電話番号 0167-22-3242
    • 営業時間 9:00AM〜5:00PM(試飲は〜4:30PM)
    • 休み 年末年始
    • 料金 見学無料(試飲は無料3~4種類、有料1杯200円、12種類)
    • 公式サイト https://www.furanowine.jp/

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