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“東京発ベルリン行き” 敦賀が繋いだ国際列車

旅行

2024/04/12

2024年3月16日(土)、北陸新幹線が敦賀駅まで延伸し、東京方面からのアクセスがグッと便利になりましたが、実は明治時代にも、東京―敦賀を繋ぐ列車があったことをご存知でしょうか。『J-B Style2024年春号』に登場した「敦賀鉄道資料館」の展示から、その歴史をご紹介します。

ライター
取材・文/山田やすよ 写真/ミヤジシンゴ
エリア
福井県

敦賀港に立つ敦賀鉄道資料館は、旧敦賀港駅の駅舎を利用し、鉄道の歴史を紹介する資料や模型などを展示する施設だ。展示物のひとつに、「東京―ベルリン」(東京発ベルリン行き)と印字された乗車券がある。この「欧亜国際連絡列車」が発着していたのが旧敦賀港駅で、かつてヨーロッパへの玄関口としてにぎわった敦賀の鉄道の歴史を物語っている。

敦賀からヨーロッパへ。“下駄履き渡航”がブームに

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かつて敦賀は、欧亜国際連絡列車という東京とヨーロッパを繋ぐ列車の中継地点だった。敦賀港駅(写真・現敦賀鉄道資料館)は、1882(明治15)年に金ケ崎駅として開業。1899(明治32)年には、敦賀港が開港し、3年後には敦賀―ウラジオストク間に定期航路が開設された。当時は、絹製品を仕入れに訪れたロシアの商人たちでにぎわっており、いっぽう敦賀の商人たちは反物を詰めた柳行李(やなぎごうり)を背負ってウラジオストクへ渡航し、商売をしていたという。この気軽な海外出張は、“下駄履き渡航”と呼ばれて一大ブームになったとか。資料館内(写真)には、当時の港の写真が何点か展示されている。なかには、修学旅行でウラジオストクへ向かう学生たちの集合写真も。外国へ行くというよりも、隣町に遊びに行くような感覚だったようだ。

東京―ベルリンの乗車券と明治期のパスポート

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そんな敦賀港駅が、1912(明治45)年に東京とヨーロッパを繋ぐ欧亜国際連絡列車の中継駅になる(写真は当時の駅の転車台模型)。東京(新橋駅)敦賀(金ケ崎駅)を列車で繋ぎ、港からウラジオストクまでは連絡船で、ウラジオストクからヨーロッパまではシベリア鉄道を乗り継ぐという旅路だった。これにより、それまでスエズ運河経由で約40日かかっていた東京パリ間を、約17日に短縮することができたという。夢のような話でピンとこないが、資料館2階にはこの乗車券(冒頭写真)と当時のパスポート(写真)の複製が展示されている。パスポートは現在のものとは違い、B5サイズほどだろうか、ペラペラの紙でできていて折り目も残る。いまでも旅先でパスポートを紛失するのは一大事だが、当時の人々も、旅行中はこれを肌身離さず持ち歩いていたのだろう。

パリまで約17日間! 政治家や文化人たちが訪欧

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敦賀港駅から欧亜連絡船でウラジオストクへ渡り、ヨーロッパへ旅立った著名人の記録が資料館に残っている。南満州鉄道初代総裁を務めた後藤新平(ごとうしんぺい)や元外務大臣で国際連盟日本全権大使だった松岡洋右(まつおかようすけ)といった戦前戦中の政治家の名前が連なるなか、文化人の与謝野鉄幹(よさのてっかん)・晶子(あきこ)夫妻や歌舞伎役者の市川左團次(いちかわさだんじ)、当時の流行歌手である音丸(おとまる)の名前もある。また、ヨーロッパから日本を訪れた人々のなかには、人類史上初の南極点到達を果たした探検家のロアルド・アムンゼンや世界的建築家であるブルーノ・タウトといった名前も。日本古美術研究の権威で、東京高等師範学校の教授でもあったアーネスト・フェノロサは、1908(明治41)年に旅行先のロンドンで急死したが、遺骨は欧亜国際連絡列車で敦賀へ帰国し、三井寺(みいでら)の法明院(滋賀県)に葬られている。
さて、気になるのはその渡航費だが、ボランティアガイドによれば、東京―パリ間は一等客席で520円。いまの価格に換算すると約140万円だそう。資料館には当時の敦賀港のジオラマ(写真)が展示されている。巨大な船が浮かぶ港を前に、各々が夢や希望を胸に旅立ったのだろう。渡航者のリストは残念ながら資料館に展示されていないが、ボランティアガイドに尋ねてみるといいだろう。

夢の玄関口を散策。当時の敦賀に思いを馳せる

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資料館には、上述の乗車券やパスポートのほか、当時の敦賀港のジオラマや、車掌や乗務員の制服(写真)、乗車券を切る検札鋏(写真)といった鉄道マニアの心をくすぐるアイテムも展示されている。明治時代にいち早くヨーロッパへの玄関口となった敦賀。その先にどんな未来が待っているのか、商人や政治家、旅人たちの心をときめかせた街の歴史にふれつつ港を散策すれば、より印象深い旅になるに違いない。

「敦賀鉄道資料館(旧敦賀港駅舎)」つるがてつどうしりょうかん(きゅうつるがこうえきしゃ)
    • 住所 福井県敦賀市港町1-25
    • 電話番号 0770-21-0056
    • 営業時間 9:00AM~5:00PM
    • 休み 水曜(祝日の場合は翌日休)、年末年始
    • 料金 無料

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