オーストラリア “伝説の人魚(ジュゴン)”が待つシドニーの愛され水族館へ
旅行
2026/01/30
マレー語で“海の貴婦人”を意味するジュゴン。すらりとした色白のその姿は、まさに人魚伝説を彷彿とさせてくれる。愛嬌たっぷりのジュゴンに会える「シーライフ・シドニー水族館」があるのは、近年再び注目を浴びているエリア、ダーリング・ハーバーだ。海とともにあるシドニーの街の魅力を訪ねよう。

- 取材・文/平野美紀 写真/平野正洋

- オーストラリア(シドニー)
水族館で出会える オージーゆかりの希少生物たち

南の海の温かく浅い沿岸水域に生息し、人魚伝説で知られる大型海洋性哺乳類、ジュゴン。グレート・バリア・リーフは、世界最大のジュゴン生息地のひとつで、その数は10万頭以上と推定されている。しかし、世界的に個体数が激減しており、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅が危惧される「危急種」に指定されている。
「シーライフ・シドニー水族館」で会えるのは、グレート・バリア・リーフに面したクイーンズランド州北部のフォレスト・ビーチで母親とはぐれて打ちあげられ、救助された雄のジュゴン(冒頭写真)。怪我などを入念にチェックされ、海に戻されたが、しばらくして、また浜に打ちあげられているのが発見されたという。生まれて数週間で孤児となり、親から生きる術を学ぶ機会を失ったジュゴンが野生で生きていくのは困難だろうと、最終的に設備の整ったシーライフ・シドニー水族館へ運ばれた。
救助された当時は体長わずか1メートル、体重20キログラム弱と新生児としては小柄だった孤児のジュゴンは、その旺盛な食欲から「ピッグ」と名づけられた。27歳になったいまでは体長約3メートル、体重約250キログラムにまで成長した(写真)。
草食獣であるピッグの好物はレタス。毎日約40キログラムものレタスを食べるため、飼育担当係は、6〜7人がかりでレタスの葉をちぎり、ピッグの食欲を満たしているそうだ。食欲だけでなく、好奇心も旺盛なピッグは愛嬌満点。機嫌のよいときは水面に浮かびながら、浮き輪などで遊ぶ姿も見せてくれる。


ピッグに次いで人気なのは、ペンギンたちだ。小型で丸みを帯びたリトル・ペンギン(写真)は、シドニーにも営巣地がある世界最小のペンギン。ジェンツー・ペンギンとキング・ペンギン(写真)は世界遺産のマッコーリー島など、南極に近い島に生息している大型のペンギンだ。この水族館だけでオーストラリア海域に生息する3種のペンギンをすべて間近で見られるのがうれしい。


シーライフ・シドニー水族館で見られるのは、オーストラリア近海に棲む生き物ばかり。シドニー近海の固有種のため〝シドニー・シーホース〞とも呼ばれるタツノオトシゴの一種、ホワイツ・シーホースや、世界最大級のサメの展示エリア、「シャーク・バレー」も見逃せない。
館内には、最新テクノロジーを使ったアトラクションを体験できるコーナーもある。VR用ゴーグルを装着し深海を旅する「アンダーシー・エクスプローラー」のほか、夜光虫という発光生物が光る夜の海を再現した「ムーンライト・ビーチ」(写真)では、モーションセンサーが人の動きを感知すると波が砕け散る仕掛けが楽しめる。
また、サンゴ礁の海が大きなガラス越しに広がる劇場風の展望室(写真)からは、マンタやウミガメ、色とりどりの魚たちがゆったりと泳いでいる様子が眺められ、まるで竜宮城に来ているような気分にさせてくれるだろう。
潮風を感じるシドニーのベイエリア散策

街の中心部が海に面しているシドニー(写真)。都会のイメージが強いが、入り組んだ湾沿いや南太平洋に面した東岸にビーチが100以上も点在し、海が人々の生活の一部になっている〝海の街〞でもある。街なかを歩くだけで潮の香りが感じられるのは、シドニーならではといえる。
シドニーでの滞在は、この街の魅力がコンパクトに凝縮されたウォーター・フロント・エリアのダーリング・ハーバーがおすすめだ。オーストラリア最大のビジネス街でもあるセントラル・ビジネス・ディストリクトの西側に位置するダーリング・ハーバーは、水族館や海洋博物館などがあることから、もともと観光スポットとして知られてきたが、近年、最も開発が進められているホットなエリアのひとつとなっている。


ダーリング・ハーバーの湾沿いには、「ハイアット・リージェンシー・シドニー」(写真)のような高級ホテルのほか、レストランやパブ、カフェなどの飲食店がずらりと並び、シドニー随一のステイ&ダイニング・スポットに生まれ変わった。宿も食事も観光名所も、ほとんどがウォーター・フロントに集中しているため、朝から夜まで海の街シドニーの雰囲気を楽しめるはずだ。
ハーバーの風光明媚な景色が広がるホテルの部屋で目覚めたら、湾沿いを散策しながら朝食を食べに出かけよう。プロムナードに並ぶカフェやレストランの朝食メニューをチェックするのもいいだろう。
湾沿いには、海岸づたいに遊歩道が整備されている。そのまま北へ向かうと、シドニーのシンボル「シドニー・ハーバーブリッジ」、そして「シドニー・オペラハウス」が見えてくる。朝のウォーキングに最適な気持ちのいいコースだ。
潮風を頰に受けながらウォーキングで汗を流した後は、シャワーを浴びて、もう一度ジュゴンのピッグに会いにシーライフ・シドニー水族館へ。さまざまな海の生き物たちを眺めながら、ゆったりと過ごす時間は、いやしのひとときになるに違いない。おなかが空いたら、「ニックス・シーフード・レストラン」(写真)で新鮮な海の恵みを堪能しよう。


世界三大美港のひとつに挙げられるシドニー湾。青い海と空に、白いオペラハウスが映える美しい風景が広がる。
湾に面した人気エリア「ザ・ロックス」(写真)は、1788年に英国から初めての植民船団が到着した、近代シドニー発祥の地だ。歴史を感じる街並みが続き、細い小道や路地裏を散策するのが楽しい。歩き疲れたら、「パンケーキ・オン・ザ・ロックス」自慢のパンケーキ(写真)とコーヒーでひと休み。食事のメニューもあり、ランチにもおすすめだ。

シドニー湾の美しさがより一層際立つのは夕暮れどき(写真)。クルーズ船からの眺めは、忘れられない思い出になるだろう。50年以上にわたりダイニング・クルーズを運航してきた「キャプテン・クック・クルーズ」は、船内で調理された作りたての料理がおいしいと評判。質の高い豪州産ワインやカクテルとともに、シドニーが最も輝くサンセットの瞬間を楽しみたい。
(*注釈)
※本記事は、『J-B Style2025 冬号』(P36~40、42~45)を転載しています。

