ヨセミテ
～氷河が生んだ奇跡の地へ～
旅行
2025/10/24
米国カリフォルニア州中東部を縦走するシエラネバダ山脈。その西側には圧倒的な景観で人々を魅了する「ヨセミテ国立公園 」が広がる。太古の昔に氷河が削り出した巨岩と絶壁が織りなす 絶景を見に出かけよう。
- 文・写真／小川佳世子 コーディネート／Yukari Fowler
- カリフォルニア州（アメリカ）
圧倒的スケールの自然に身をゆだねる
1890年創設の「ヨセミテ国立公園」（冒頭写真）は、総面積が約3074平方キロメートル（東京都の約1.4倍）。高さ千メートル級の花崗岩の山々に広大な草原と湖、多様な動植物が共存し、1984年にはユネスコ世界自然遺産に登録された。
公園内はほぼ原生地のため、訪問者の多くは道路や観光施設が整ったヨセミテ渓谷をめざすことになる。
まずは渓谷内にある「ヨセミテ・バレー・ウェルカムセンター」（写真）で最新情報を入手。続いてここから徒歩圏内の「ヨセミテ博物館」でその歴史にふれ、「アンセル・アダムス・ギャラリー」で、この地を撮影し続けた写真家の情熱を知ると、まだ見ぬ絶景への期待が高まっていく。
買い物客でにぎわう「ビレッジ・ストア」で携行食を購入し、いよいよ最寄りのみどころへ。
そそり立つ巨大な山々に圧倒されつつトレイルを20分程歩くと、辿り着くのはヨセミテ滝（写真）だ。轟く水音、冷たい水しぶき。凜としてすがすがしくも圧倒的なその姿には、畏怖も覚えた。
変わりゆく天候に多彩な表情を見せる山々
ヨセミテ渓谷から最も近い公園外のホテルとして人気なのが「ヨセミテ・ビュー・ロッジ」（写真）。渓谷内に続くマーセド川のほとりにあり、キッチン付きの広々とした客室が好評だ。
宿を出発し、渓谷内を車で進んでいく。曇天だというのに、沿道には写生や写真撮影に勤しむ人の姿が目立った。 ヨセミテの景観は実に多彩だ。晴天時の岩山は力強く、草花は鮮やかさを増す。岩壁が雨に濡れれば独特の情緒が生まれる。その折々の風景に、多くの芸術家たちは夢中になるのだ。
渓谷内を散策した後は、1927年創業の名門ホテル内にある「アワニー・ダイニングルーム」（写真）へ。“ヨセミテで一度は行ってみたい憧れのレストラン”として人気がある。
ダイニングルームへは、趣あるロビーを通る。スープとサラダ、 ドリンクが付いたディナー ・ビュッフェ（大人US＄63）が好評で、その味を堪能しようと、 客席は瞬時に埋まる。
ゴールドラッシュの面影を残す町マリポサへ
この日の天気予報は終日雨。園内散策の代わりに、ヨセミテ国立公園の近隣にあるマリポサ（写真）の散策へ向かった。
マリポサは人口約1200人の小さな町だ。いまでは公園の玄関口として知られるが、その歴史は19世紀後半までさかのぼる。かつて米国西部の歴史を動かしたゴールドラッシュで隆盛を極めた郡庁所在地であり、町のあちこちにその名残りがある。
まずは、スミソニアン協会がミシシッピ川以西の“ベスト・リトル・ミュージアム”に選んだ「マリポサ博物館＆歴史センター」（写真）へ。貴重な資料や展示から、当時の金鉱業の様子や人々の暮らしを辿ることができた。
その近くには地元の人々御用達の「パイオニア・マーケット」がある。ここで旅の忘れ物を揃えたり、地コーヒーやお菓子などのみやげを入手。
せっかくなのでディナーも地元の人気店へ。「フレドリックス・オブ・セイボリーズ」（写真）の上質なステーキや味わい深い魚料理は、マリポサ散策をより豊かで印象深いものにしてくれた。
地球の躍動が生んだ絶景を心に刻む
せっかくだからキャンプ気分も味わってみたい、と選んだもうひとつの滞在先が、「オートキャンプ ヨセミテ」。エアストリーム社製の高級キャンピング・トレーラーを改装したユニットは、キッチン、空調、シャワー・トイレ完備。気軽にグランピングできるのが魅力だ（写真）。
早朝、カーテンの隙間から柔らかな陽光が差し込んできた。本日の予報は晴れ。期待に胸を弾ませ、朝食の用意を始める。薪が燃える音、春先の少し冷たい朝の空気。熱々のコーヒーがいっそうおいしく感じられた。
荷物を整え、ヨセミテ渓谷（写真は「グレイシャー・ポイント」）へ向かう。前日の雨のおかげで空は抜けるように青い。トレイルを歩けば、小動物たちがひょっこりと姿を見せ、沿道では今日も旅行者たちが熱心にカメラを構えている。さあ、今日はどこまで歩こうか ―― ワクワクしながらトレイルマップを広げた。
ヨセミテ国立公園は先人たちが築いた制度の下で大切に守られてきた。ここで出合った宝物のような自然を、大切に心に刻んでいきたい。
協力／Yosemite Mariposa County Tourism Bureau（https://www.yosemite.com/）
※本記事は、『J-B Style25秋号』（P30～37）を転載しています。
