注目を集める大阪・関西万博と中之島の取り組み
旅行
2025/06/20
『J-B Style2025年夏号』の大特集「いざ、大阪観光」で登場する大阪市北区中之島。現在、夢洲で開催中の「EXPO 2025大阪・関西万博」に併せて、古くからの文化資産に充ちている中之島でも、「中之島パビリオンフェスティバル2025」のような新しい催しが始まっている。

- 取材・文/薄雲鈴代 写真/ウエスト・パブリッシング、PIXTA

- 大阪府
現在、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)で開催されている「EXPO 2025大阪・関西万博」。158の国と地域が参加、180を超えるパビリオンが出展し、大いに賑わっている。会場は広く、2日かけても回れないほどで、すでにリピーターも増えているという。
魅力満載のEXPO 2025大阪・関西万博
万博の会場を見てみると、未来社会を体感できる「大阪ヘルスケアパビリオン」では25年後の自分のアバターをつくり、そのアバターと一緒に次世代の技術や食品を見ていく。また、万博会場の真ん中に位置する「シグネチャーパビリオン」は、各界で活躍する8人(石黒 浩・落合陽一・河瀨直美・河森正治・小山薫堂・中島さち子・福岡伸一・宮田裕章)が「いのち」をテーマにプロデュースする8館で構成されている(写真はメディアアーティスト・落合陽一氏のnull2)。そのひとつ、ロボット工学の第一人者・石黒 浩氏がプロデュースする「いのちの未来」館では、人間とアンドロイドが共存する50年後の社会が体験できる。日本の心を宿す「ヤマトロイド」をはじめ、様々なアンドロイドとふれ合える。
先端技術ばかりでなく、自然回帰をイメージした空間も多い。「オーストラリアパビリオン」では巨大なユーカリの森が広がり、「インドネシアパビリオン」では熱帯雨林への没入感を体験。湿気を帯びた空気や匂いまでも生々しく体感できる。そして、なんといっても世界各国の珍しい郷土料理やスイーツが一度に味わえるのも万博ならではの醍醐味だ。
万博会場のシンボルとなった「大屋根リング」

万博の来場者の声では、「大屋根リング(写真)がすばらしかった」と異口同音。京都・清水寺の懸(かけ)造りに通じる伝統工法を基本にして造られ、1周約2km、高さ約20m、世界最大の木造建築としてギネス世界記録にも認定された。そこから眺める大阪湾の夕景にはロマンが感じられる。加えて現実的な話に戻せば、大屋根から会場を俯瞰できるので、次に行きたいパビリオンを探すのにも得策だという。
会場の夢洲へは、万博開催当初は交通の便が悪いと報じられていたが、近郊主要駅から出ているシャトルバスなら乗り換えなしで会場へ到着でき、とても便利だ。中之島の「京阪中之島駅」万博シャトルバスのりばからも運行している。
「中之島パビリオンフェスティバル2025」開催

さて、そんな中之島(冒頭写真)は近年、堂島川と土佐堀川に挟まれた中州で、“水都大阪のクリエイティブアイランド”と称されている。周囲約7.5km、徒歩1時間半ほどで回れる。万博開催に併せて「中之島パビリオンフェスティバル2025」を開催しており、音楽会やアート展覧会、ワークショップに夜の水上さんぽガイドツアーなど、イベントも目白押しだ(万博終了の10月13日まで)。
これは、文化庁が推進している「日本博2.0」というプロジェクトの一環で、中之島を「創造的な実験島」と称し、たくさんの試みが展開されている。そのひとつに「中之島15の場所での物語」がある。中之島の施設を15のパビリオンに見立て、バス停のようなサインスタンドを設置(写真・大阪府立中之島図書館玄関横)。その場所に関する物語が1話読み切りで配架されている。作者は演劇カンパニー「チェルフィッチュ」主宰の演劇作家・岡田利規(おかだとしき)氏。中之島を歩きながら、物語をひとつずつ拾い読みしていくのも楽しい。中之島の新しいシンボル「大阪中之島美術館」(写真)も設置場所のひとつだ。
また、中之島を東西に走る京阪電車中之島線の5つの駅(天満橋駅・なにわ橋駅・大江橋駅・渡辺橋駅・中之島駅)の改札周辺は、美術館(「みんなの駅美術館」)になっているので、展示されたカラフルなアート作品にも注目したい。
日本人で万博を初めて見た福澤諭吉は中之島出身
ところで、万博を初めて見物した日本人のひとりに福澤諭吉がいる。幕府の文久遣欧使節団の一員として海を渡った1862年、ロンドンでは国際博覧会が開かれていた。
「西洋ノ大都会ニハ数年毎ニ産物ノ大会ヲ設ケ世界中ニ布告シテ各々其国ノ名産便利ノ器 械、古物奇品ヲ集メ万国ノ人ニ示スコトアリ之ヲ博覧会ト称ス」(『西洋事情』初編 巻之1)
初めて体験する万博で、「智力工夫ノ交易ヲ行フカ如シ」と、万博が国際的な知識の交流の場であると的確に解説している。博覧会という概念も、諭吉が万博に行ったところから浸透したものだ。その福澤諭吉は、中之島の生まれである。
そもそも江戸時代の中之島は諸藩の蔵屋敷が立ち並び、全国の物資が大坂(大阪)に集められ、そこから各地に渡っていくという商業の中心地であった(写真はその説明板)。
玉江橋の北詰めにあった中津藩蔵屋敷で諭吉は誕生した。天保5年12月12日(西暦1835年1月10日)のことである。堂島川沿いに「豊前国中津藩蔵屋舗之跡」と福澤諭吉誕生地の石碑が立つ(写真)。後者は羽を広げた鳥の姿をした不思議な形のモニュメントで、そのそばに「天ハ人ノ上ニ人ヲ造ラズ人ノ下ニ人ヲ造ラズ」の名文が刻まれた碑もある。地元大阪でも知らない人が多い穴場だ。
ちなみに、福澤諭吉の『福翁(ふくおう)自伝』は、イギリスのチャールズ国王の愛読書であるという。重要文化財の洋館やレトロな街並みのみならず、中之島は世界に誇る日本博の宝庫。万博と合わせて、ぜひ訪れてほしい。


