3つの“SAKU”が込められた「SAKU美SAKU楽」
旅行
2025/04/11
『J-B Style2025年春号』で紹介しているJR西日本の観光列車「SAKU美SAKU楽」。岡山駅を出発し、「さくら名所100選の地」に選ばれている桜の街・津山へと走る列車は、どのようにして生まれたのか ――淡いピンク色に染まった列車の誕生秘話をご紹介します。

- 取材・文/山田やすよ 写真/ミヤジシンゴ、JR西日本

- 岡山県
JRグループ旅客6社と地方自治体、観光事業者などが協力して実施する観光キャンペーン「デスティネーションキャンペーン」。2022年7月に「こころ晴ればれ おかやまの旅」と題して行われたキャンペーンに際して、JR西日本岡山支社が注目したのが、岡山県北エリアの活性化。県北のゲートウェイである津山に着目し、その魅力を発信するために検討されたのが、新しい観光列車だった(冒頭写真)。
美作国を表現するメインカラーは「淡いピンク色」


コンセプトは、かつて美作国(みまさかのくに)と呼ばれていた津山市、美作市、真庭(まにわ)市など、県北部の10市町村をアピールするにふさわしい、「岡山県北エリアをめぐる、美しきをつくる旅」に決定。津山城の桜や湯原(ゆばら)温泉、奥津(おくつ)温泉、湯郷(ゆのごう)温泉の“美作三湯”のいやしのイメージを表現するために列車の外装を淡いピンク色にすることに。とはいえ、ひと言でピンク色といっても光の加減で目に映る色はさまざま。JR西日本岡山支社の屋上などで、微妙に色味の異なるピンクの鉄板を並べて、いやしを感じられる色か、日陰でも日向でも映える色か、ほかの列車や電車と見分けがつくかと、何度も検討したという(写真)。
ネーミングに込められた3つの“SAKU”とは?


「SAKU美SAKU楽」というネーミングは一般から募集。500を超える応募があったそうだが、決まったのは岡山県内在住の男性の案で、美しさや楽しさを「作」る、笑顔・花が「咲く」、その地の美しさや楽しさを探し求める「索」という3つの“SAKU”の意味が込められた。ロゴは列車の名前が決まってから検討を開始。「旅を贈る、旅を包む」の意味からリボンの柔らかな曲線で旅への優雅さと高揚感を表現した。列車に掲げられたロゴは、どこか誇らしげだ(写真)。外装のデザインは、温泉・おもてなしがもたらす、いやしや岡山県北エリアに名所として点在する桜をイメージした淡いピンク色の車体に、風に運ばれた四季折々の花びらをあしらった。制作されたデザインはグッズ展開も。さわやかでかわいらしいアイテムは、車内販売でも好評だという(写真)。
こだわりが随所にちりばめられた列車内


工夫を凝らしたのは、車内も同様。山や自然のなかで過ごす気分に浸ってもらえるよう、落ち着いたグリーンとブラウンを採用し、車体外装の色味に合わせた暖簾には、桜の花びらが舞っている。座席上部にある座席番号の表示をよく見れば、こちらにも花びらが。しかも、1列目の席表示には1枚、2列目の席表示には2枚……と、花びらが増えていくという細かなこだわりも(写真)。
車内吊りポスターは、岡山市建部町(たけべちょう)出身の水彩画家、おかだ美保氏による水彩画(写真)。車内では、地元飲食店監修のお弁当や岡山市の人気タルト店のスイーツセットといったサービスを受けられる(要予約)ほか、アテンダントによる沿線の案内も楽しめる。
春を感じに、淡いピンク色の車に乗って津山観光へ
津山駅到着後も、乗車したSAKU美SAKU楽の旅の高揚感のまま名所見学ができるようにと、2023年3月より同じデザインのタクシーが登場(写真)。地元の勝田交通が所有車両1台にラッピングを施している。
列車のネーミング、列車内外のデザイン、車内のサービス、これらは岡山を愛する多くの人のアイデアを議論し検討を重ねて決定したもの。車両の専門会社、広告会社、デザイン会社、暖簾職人、地元のシェフやパティシエたちが一緒になって作りあげた観光列車、SAKU美SAKU楽の2025年の運行は3月20日(木・祝)から始まっている。今年の春は、淡いピンク色の列車で岡山の魅力を感じてみてはいかがだろう。
- 電話番号 0570-00-2486(JR西日本お客様センター)
- 営業 JR津山線 岡山〜津山(~11月30日(日)の土・日・祝を中心に1日1往復)
- 料金 岡山〜津山 1,700円(全席指定/乗車券大人1,170円+指定席券530円)
- 公式サイト https://www.jr-odekake.net/railroad/kankoutrain/sakubisakura/


