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フィレンツェ・ナターレの街角を歩く

旅行

2025/01/24

「ナターレ」とは、イタリア語でクリスマスのこと。ルネサンス時代の街並みがいまに残るフィレンツェでは、12月になると、街のそこかしこがナターレの装飾で華やかな空気をまとう。イルミネーションに輝く通りを散策しながら、クリスマスを楽しもう。

ライター
取材・文/池田愛美 写真/池田匡克、RobertoEvangelisti/Shutterstock.com
エリア
フィレンツェ(イタリア)

「ドゥオモ」とカルツァイウオーリ通り~フィレンツェの象徴を 大木のツリーが彩る

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イタリア中部にあるフィレンツェは、ルネサンス時代に完成した街並みが美しい古都。この街が最も華やぐのがナターレ(クリスマス)だ。通りごとに異なる意匠のイルミネーションが飾り付けられ、主だった広場には大きなクリスマスツリーが登場する。なかでも印象的なのが、フィレンツェの象徴的存在「サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂(ドゥオモ)」前にそびえるクリスマスツリーだ(写真)。ツリーの下部にはテラコッタ製のプレゼピオ(キリスト降誕の場面を再現した模型)が飾られる。12月8日の「無原罪(むげんざい)の御宿(おんやど)り」には聖母マリアとヨセフが、24日から25日にかけての真夜中にはキリストが、ふたりの間に現れることになっている。

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イタリアのナターレになくてはならないのが、パネットーネ。ドライフルーツを練り込んだ大きな発酵菓子で、ドゥオモ前にある1939年創業の「カフェ・スクディエリ」では、この時期だけオリジナルのパネットーネを販売する(写真)。またドゥオモから徒歩5分ほどのカフェレストラン&ショップ「ラ・メナジェレ」(写真)では、クリスマスオーナメントが並ぶ。どちらも街歩きの合間にクリスマス気分を満喫できるスポットだ。

「シニョリーア広場」とヴェッキオ宮殿~中世の政庁舎広場で 聖夜の景色を愛でる

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キリスト教文化を代表するドゥオモと、メディチ家による政治の中心だったヴェッキオ宮殿。それぞれを擁する広場は一本の通りで結ばれ、その一帯がフィレンツェの中心を形成している。そして、クリスマスのデコレーションもこの辺りがいちばん華やかだ。ヴェッキオ宮殿のある「シニョリーア広場」にもドゥオモ広場とはまた趣の異なるツリーが置かれる(写真)。さらに近年はヴェッキオ宮殿の壁面がプロジェクションマッピングで彩られるようになり、新たなクリスマススポットとして人気だ。

シニョリーア広場でぜひ立ち寄っておきたいのが、「リヴォワール・フィレンツェ」というサロン・カフェ。北イタリア・トリノ出身のチョコレート職人が創業したホットチョコレートの店を原点とする老舗で、自慢はもちろんチョコレートだ(写真)。美しいパッケージのなかに収まった艶やかなプラリネはギフトにぴったり。

そして、この界隈でクリスマスのディナーを楽しむなら、「アンティコ・リストランテ・パオリ」(写真)へ。1827年創業という歴史を誇る伝統的トスカーナ料理の店だが、スペシャリテはトリュフ料理。12月まで採取が認められている珍味、白トリュフを使ったパスタやフィレンツェ名物のステーキを味わいたい。

「共和国広場」とトルナブオニ通り~家族や友人と過ごす にぎやかなひととき

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イタリアの人々にとって、ナターレは家族や親しい人とともに過ごす大切な時間。食事やプレゼント探しに街へ繰り出すことも多い。人々が集まってくる場所のひとつが「共和国広場」(写真)だ。広場をぐるりと囲むようにカフェが並び、なかほどにはメリーゴーラウンドもある。そこここでおしゃべりの花が咲く、その様子を眺めているとこちらもウキウキしてくる。

待ち合わせにしばしば使われるのが共和国広場に面した「リナシェンテ・フィレンツェ」(写真)。ファッションを中心に扱う百貨店で、12月は外壁がクリスマスイルミネーションに覆われる。この時期に販売するクリスマスオーナメントはぜひチェックしておきたい。さらに、トスカーナ伝統の味をいまに伝える「ムゼオ・ボッテガ・マッテイ」も訪れたい。フィレンツェの隣町プラートで、アーモンド入りのカントゥッチと呼ばれるビスコッティなどを製造する老舗の支店で、鮮やかなブルーの外観が目印。小さなショップには昔ながらの焼き菓子が並び、店の奥には往時の写真やパッケージが展示され、その歴史を垣間見ることができる。

「ヴェッキオ橋」とアルノ川沿い~旅のフィナーレは アルノ川沿いで

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フィレンツェの街は東西に流れるアルノ川で大きくふたつに分かれている。ドゥオモやシニョリーア広場がある北側がいわば街の中心で、南側は昔から職人の工房が多い地域。このふたつを結ぶのがアルノ川に架かる何本かの橋で、中央の「ヴェッキオ橋」にはルネサンス時代に金細工の工房が集められ、現在も貴金属店が軒を連ねる(写真)。12月のヴェッキオ橋は、宵闇に浮かびあがるジュエリーとイルミネーションで一段と煌びやかだ。店が閉まってからも橋の上から街を眺めようとする人々で夜更けまでにぎわう。ナターレの街歩きのフィナーレにふさわしい。

そんなヴェッキオ橋を眺められる場所にあるのが「ホテル・ルンガルノ・フィレンツェ」(写真)。川沿いの客室はもちろん、1階のカフェテラスからもフォトジェニックな景色が楽しめる。まばゆい光をまとったツリーが出迎えるエントランスの装飾も、この時期ならではの演出(写真)。

アルノ川沿いの散歩ついでに足を延ばすなら、「サンタ・クローチェ広場」で開かれるクリスマス市にも訪れたい。12月初めから半ばごろまで食品や雑貨、クリスマスオーナメントの屋台が並ぶ。ドイツ風の甘いホットワインや焼きたてのソーセージを味わいつつ、屋台を一軒一軒覗(のぞ)くのも楽しい。イタリアにいながら北ヨーロッパのクリスマス気分を味わえるスポットだ。

 

※本記事は、『J-B Style24冬号』(P28~37)を転載しています。

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