【長崎県「ホテルインディゴ長崎グラバーストリート」】約130年の時を重ねた洋館で、長崎の物語に浸る
宿泊
2026/10/16
時を経ても美しく、歴史が凝縮された建築に新たな命を吹き込む“リノベホテル”。その土地、その建物が紡いできた物語を洗練させて現代によみがえらせ、心地よさを増した空間で唯一無二の滞在を。——今回訪ねるのは、異国情緒漂う長崎・南山手にたたずむ「ホテルインディゴ長崎グラバーストリート」。1898(明治31)年に建てられた修道院を受け継ぎ、130年近い時を刻んだ赤煉瓦の洋館で、長崎の歴史と文化に浸る一夜を。

- 取材・文/山口あゆみ 写真/入江啓祐

- 長崎県
JR長崎駅から車で約10分。路面電車なら「大浦天主堂」停留場で降り、異国情緒漂う南山手の坂道を上っていく。大浦天主堂やグラバー園など、長崎を象徴する名所が点在する一帯を進むと、やがて重厚な赤煉瓦の洋館が姿を現す(冒頭写真)。1898(明治31)年に建てられた歴史的建造物を再生し、2024(令和6)年に誕生した「ホテルインディゴ長崎グラバーストリート」である。
敷地に入り、エントランスへと続くアプローチを歩いていると、足元に愛らしい猫の姿を発見。長崎で多く見られる、尻尾の曲がった「尾曲がり猫」だ。その姿を追うように歩みを進めれば、まるで猫に導かれるようにホテルのなかへ。到着早々の長崎らしい出合いに、気持ちが和む。
修道院の面影と記憶を受け継ぐ、歴史的建造物の再生


本館の建物は、もともと修道院として建てられたもの。その後、戦時中の日本軍関連施設としての利用、米軍による接収などを経て、長い間、児童養護施設として地域で親しまれてきた。原爆の被害をくぐり抜けた被爆建造物でもあり、長崎が歩んできた激動の歴史をいまに伝える存在だ。
ホテルへの転換に際して重視されたのは、建物が刻んできた時間を消さないことだという。工事には約3年半を費やし、煉瓦の内部に鉄筋を入れ、建物内部には鉄骨を組み込むなど大規模な補強を施した。一方で、外観をはじめ既存の柱や煉瓦(写真)、一部のステンドグラス(写真)など、残せるものはできる限り保存。敷地にあった石や楠も新たな空間へと受け継がれている。古い建築を単に美しくよみがえらせるのではなく、そこに刻まれた記憶まで次代へ手渡そうという姿勢があちこちに感じられる。
館内の随所に息づく、長崎の歴史と文化


一歩館内へ入ると、歴史を継承しながらも、空間の表情は鮮やかに現代へと切り替わる。ホテルインディゴが大切にするのは、その土地の歴史や文化をデザインやサービスに映し出す「ネイバーフッドストーリー」。出島や長崎の路地、オタクサ、丸眼鏡、長崎刺繍、唐紙、椿、そして尾曲がり猫など、長崎にまつわるモチーフがそこかしこに潜んでいる(写真は長崎の石畳とレンガをコラージュしたデザインのカーペットが敷かれた廊下と、長崎更紗をイメージしたモザイクタイルや、出島をデザインしたラグが印象的なロビー)。
ひとつひとつを見つけ、その背景を知るのも滞在の楽しみだ。事前にリクエストすれば、スタッフによる30分ほどのホテルツアーに無料で参加でき、建物の歴史やデザインに込められた物語を聞きながら館内を巡ることもできる。


客室にも、長崎という街を読み解く仕かけがちりばめられている。ベッドの壁面に置かれた屏風には、ホテルから望む山あいの風景や、異国から訪れた船が浮かぶ長崎湾の風景が描かれている。ベッドサイドのライトは長崎が伝来の地とされる洋傘をモチーフにし、シーボルトが世界に広めた「ヤブツバキ」を描いた有田焼の壺を用いたもの。和・華・蘭の文化が交差して育まれた土地の美意識が、現代的なデザインへと昇華されている。
なかでも本館に3室あるスイートは、この建物ならではの特別感に満ちている。大天使ミカエル像(写真)が窓越しに見える象徴的な客室(写真)もあり、かつての修道院の記憶と現代のホテルライフが静かに重なり合う。
ホテルを出て気軽に楽しむ、南山手と長崎の夜景

夕食まで少し時間があったので、ホテルスタッフに勧められてタクシーで約7分の鍋冠山(なべかんむりやま)へ夜景を見に出かけることに。南山手の坂道を上り展望台へ辿り着くと、眼下には長崎港を中心に、山の斜面に沿って家々の明かりが連なっている。港と山が近い長崎ならではの立体的な夜景だ(写真)。ホテルで静かに過ごすだけでなく、ふらりと外へ出れば、この土地の風景や暮らしの気配にふれられるのも南山手に泊まる楽しみである。
和・華・蘭の料理とカクテルで、長崎の夜を味わう


夜景の余韻を胸にホテルへ戻り、夕食はかつて聖堂だったレストラン「カテドレクラ」へ。既存の柱やステンドグラスを残した荘厳な空間で味わうのは、長崎の和・華・蘭文化を料理で表現したコースだ(写真はアミューズと魚料理。料理は一例/ホテルインディゴ長崎グラバーストリート)。地元の魚や野菜、五島や対馬など県内各地の食材を取り入れ、フレンチを軸に和食や中華の技法、調味料を重ねていく。締めには、あごだしを使ったおにぎり茶漬けが登場。歴史ある空間と長崎の食文化が響き合い、この土地を味覚からも旅しているようである。
食後はラウンジへ場所を移し、長崎の夜をもう少し楽しむ。ぜひ選びたいのはシグネチャーカクテル「YUKOH -游香-」。五島列島・福江島で造られるクラフトジン「GOTOGIN」をベースに、長崎ゆかりの稀少な柑橘「ゆうこう」を合わせた一杯だ。さわやかな柑橘の香りと酸味が、ジンの華やかな風味と心地よく重なる。
130年近い時を刻んできた建物に泊まり、その痕跡を辿り、街を歩く。滞在を通して、ホテルのなかと外、過去と現在が緩やかに繋がるこの場所では、受け継がれてきた記憶に現代の感性を重ねながら、新たな物語が紡がれている。夜景を眺め、長崎らしい料理を味わい、土地ゆかりの一杯を楽しむうちに、長崎という街が少しずつ身近に感じられてくる。
(*DATA)
ホテルインディゴ長崎グラバーストリート
ほてるいんでぃごながさきぐらばーすとりーと
●電話番号 095-895-9510
●料金 1泊37,000円~(室料・サービス料込・宿泊税別)、シグネチャーディナーコース「Blanche」15,820円(サービス料込)
●公式サイト https://nagasaki.hotelindigo.com/
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※掲載内容は、2026 年9月時点の情報です。時期や天候、施設・店舗の諸事情により
変更となる場合があります。※価格は消費税込。

