Web限定連載
大人を魅了する話題のリノベ宿
Vol.1

【奈良県「星のや奈良監獄」】旧監獄がスイートルームに!? 近代日本の黎明期にタイムスリップ泊

宿泊

2026/07/17

時を経ても美しく、歴史が凝縮された建築に新たな命を吹き込む“リノベホテル”。その土地、その建物が紡いできた物語を洗練させて現代によみがえらせ、心地よさを増した空間で唯一無二の滞在を。——第1回は、かつての監獄をリノベーションした「星のや奈良監獄」へ。文明開化の時代を伝える、新たな星のやで過ごす一夜の非日常体験。

ライター
取材・文/山口あゆみ 写真/星のや奈良監獄
エリア
奈良県

近鉄奈良駅から車で約6分、JR奈良駅から車で約10分。東大寺の北側にある般若寺のすぐ近くに、2026年6月25日、「星のや奈良監獄」がオープンした。1908(明治41)年に竣工した赤レンガ造りの刑務所建築である「旧奈良監獄」を活用したラグジュアリーホテルだ。到着するとまず迎えてくれるのは、堂々たる表門(冒頭写真)。建築当時のモダンな西洋様式を取り入れた、旧奈良監獄を象徴する重厚な赤レンガの門をくぐると、外界とは切り離された非日常の時間が始まる。

文明開化の時代をいまに伝える威風堂々とした建築

開国し、明治維新を経た日本。西洋諸国の文化を積極的に取り入れ、近代国家日本を実現しようと必死だった時代に、明治政府は江戸幕府が締結した不平等条約の撤廃を目指し、「法治国家 日本」を欧米列強にアピール。その一環として、近代的かつ人道的な西洋風の監獄の整備にも力を注いでいた。1901(明治34)年に建築がスタートした旧奈良監獄を皮切りに、日本全国に5つの監獄が竣工。そのなかで、現在も建築当時の姿をほぼ完全に残し、よい状態で保存されているのは旧奈良監獄のみ。旧奈良監獄は2017年に国の重要文化財に指定された。

旧奈良監獄を設計したのは山下啓次郎。東京帝国大学で、東京駅など数々の明治の名建築を設計した辰野金吾のもとで建築を学び、欧米を視察したのち、五大監獄を設計した建築家だ。彼が取り入れたのは、中央看守所を中心に収容棟が放射状に広がる「ハヴィランド・システム」(写真)。今回のリノベーションでは、中央看守所部分が新たな集いの場に、そしてこの放射状に延びる5つの舎房のうち4つがラグジュアリーな客室に生まれ変わった。

計算されたシンメトリーが描きだす、静謐な美しさ

赤レンガの壁に瓦屋根という和洋折衷の建物のエントランスを入ると、そこは中央看守所(写真)。高い窓から光が差し、明治期の西洋建築の内装らしい木の羽目板の天井や曲線を描く中空廊下の繊細さが、外観の威風堂々さと対照的だ。また、メインラウンジは開放的空間にモダンな家具が配され、エレガントな雰囲気が満ちる場所に生まれ変わった(写真)。このメインラウンジで奈良・月ヶ瀬産のまろやかな和紅茶とお菓子を味わいながら、滞在の時間がスタートする。スタッフから歴史を含めたこのホテルのストーリーを聞くと、ここで過ごすこれからの時間への期待が高まってくる。

その後案内された客室への廊下は、表門、エントランスと同様、シンメトリーな設計で、まるで時の流れが止まったかのような静寂に満たされていた(写真)。

ぜいたくなスイートルームで歴史に思いを馳せて

客室は全48室。すべてがスイートルームだ。複数の舎房を繋ぎ合わせた、寝室・リビング・ダイニングのスペースが分かれているぜいたくな空間。壁はレンガ壁をそのまま利用し、あえてその重厚な風情を生かしている(写真)。そのほかの内装はレンガの色とグラデーションを成す、ベージュトーンのウッディな家具、迎賓館を思わせるクラシックなじゅうたんなど、典雅(てんが)でなおかつ温かな印象。

夕食は、別棟でアペリティフを楽しんだあと、ダイニングで(写真)。歴史を感じる木の梁、モダンなフォルムのチェアとテーブル、その新鮮なコンビネーションの空間で提供されるのは、「ガストロノミー・クロニクル」と名付けられた、日本におけるフランス料理の系譜を紐解くディナーコースだ。「舌平目のブレゼ」は日本のクラシックフレンチを象徴するアルベールソースで味わう、コースの中の一品(写真)。

ロマンティックな夜の表情、感性を刺激するミュージアム

星のや奈良監獄の敷地は広大で、ダイニングラウンジの外には中庭が広がる(写真)。食事の後は、この中庭に幾何学的に設けられた小道を散策したり、巧妙に配置されたチェアに座ったり、静かな時間を楽しみたい。そこから見る旧奈良監獄の建物は、窓に灯がともり、昼間とはまた違ったロマンティックな姿を見せてくれる。

翌日は併設された「奈良監獄ミュージアムby星野リゾート」(写真)へ。「美しき監獄からの問いかけ」というコンセプトのもと、歴史的な建築のなかにアート作品が融合的に展示されている。「学ぶ」というよりも「感じる」ことを大切にしたいミュージアムだ。

(*DATA)
星のや奈良監獄
ほしのやならかんごく

●住所 奈良県奈良市般若寺町18
●電話番号 050-3134-8091(星のや総合予約)
●料金 1泊1室14万7,000円~、ガストロノミー・クロニクル22,000円(宿泊者限定)
●公式サイト https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/hoshinoyanarakangoku/

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※掲載内容は、2026 年6月時点の情報です。時期や天候、施設・店舗の諸事情により
変更となる場合があります。※価格は消費税込。

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