バイキング・エデン ~北欧モダンな船で過ごす、おとなのクルーズ~
旅行
2026/04/24
乗船したそのときから、海外旅行気分を味わえるのが外国船の魅力。バイキング航海時代からのエッセンスを取り入れ、北欧スタイルのインテリアとおもてなしで迎えてくれる「バイキング・エデン」は、ゲストを大海原の旅へといざなう。

- 取材・文/粟屋千春 写真/山根朋子 協力/バイキング・クルーズ

- 韓国・釜山
乗船した瞬間から始まる、ラグジュアリーな海外旅行


日本発着の外国籍の船は、カボタージュ制度(*)により1度は海外に立ち寄るスケジュールが特徴だ。加えて、乗船した瞬間から異国情緒が味わえることが外国船籍の最大の魅力。外国人クルーが多く、船内に身を置いた瞬間から国際的な雰囲気が感じられるため、最も気軽な海外旅行として外国船籍のクルーズを選択する人も多い。
今回は、食事やドリンク、スパ内のサウナエリア、チップ、各寄港地の観光といったクルーズ中に必要な費用の多くが、あらかじめ旅行代金に含まれている〝オールインクルーシブ〞制の客船として人気の「バイキング・エデン」を例に、外国船籍ならではの船旅の魅力をお伝えする。
横浜港に停泊する船に乗り込むと、ノルウェーの民族衣装をまとったクルーが笑顔で出迎え、おしぼりとウエルカムドリンクを手渡してくれた。アトリウム(写真)には、バイキングが乗っていたロングシップ船を思わせるデザインがちりばめられ、この船が創り出す世界に一気にいざなってくれる。
出港時刻になると、多くの乗船客がデッキに集まり、汽笛の音とともに遠ざかる、みなとみらいの夜景を写真に収めていた(写真)。
(*)カボタージュ制度……船舶法第3条に基づき、日本国内のみを周遊できるのは日本籍の船のみとする制度
北欧の伝統をモダンに昇華させたクルーズシップ


外国籍の船は、20万トン超えの超大型客船から、6万トン以下でパーソナライズされたサービスを提供するハイエンドな小型船まで、多様なタイプが存在し、バイキング・エデンはその中間に分類される。明確なコンセプトをもつ船も多く、船体の仕様や細部のしつらえに取り入れられていることが多い。船内散策で、そうしたコンセプトを見つけてみるのも一興だ。
ノルウェーの実業家により設立されたバイキング・クルーズの場合は、北欧テイストと、その名が示すとおりバイキングがテーマ。モダンな北欧インテリアのあちこちに、8世紀末から11世紀半ばに北の海の覇者であったバイキングに関連する小物やモチーフが使用されている。
まずはアフタヌーンティーが楽しめる「ウィンターガーデン」(写真)へ。空間に林立する柱が、曲木の技術で美しいカーブを描き、まるで幹から枝が広がるように天井へと広がっている。北欧神話に登場するユグドラシル(世界樹)がモチーフとなった幻想的なエリアだ。レストランの「マンセンズ」は、バイキング・クルーズ創立者の〝母の味〞でノルウェーの家庭料理(写真)を味わえる。
続いて「ザ・ノルディック・スパ/サウナ」でリフレッシュすることに。白木のスチームサウナで体を整えたら、向かい側のアイスサウナ「スノー・グロット」に入って、本場さながらの雪でのクールダウンを体験。
ほとんどの客室には、ベッドにノルウェーを象徴するマリウス柄のブランケットがかけられ、ソファーには北欧風ファブリックのクッションが置かれている。シンプルかつ温かみのある北欧スタイルが心地よい。
終日航海日にはイベントやグルメを満喫


船内で毎日開催されているさまざまなイベントは、終日航海日にこそ積極的に活用したい。バイキング・エデンでは、文化体験や歴史のレクチャーなど、知的好奇心をくすぐるような内容のものが多い。そのひとつが専用キッチンで開催されるクッキングクラス(要予約・有料)だ。今回は「ジンジャーブレッドハウス作り体験」(写真)に参加。アイシングでデコレーションするのは初めてという方も多く、体験を通してヨーロッパのクリスマス文化にふれることができ、充実した内容だった。
ランチは「ワールド・カフェ」へ。この日は北欧の美味がテーマで、新鮮な魚介が並ぶビュッフェを満喫した。その後、この船の特等席である船首の「エクスプローラーズ・ラウンジ」へ向かった。窓越しに、遮るものがない青い海と空、遠くに見える水平線を見つめていると、心がゆっくりとほどけてゆく。
ディナーは「ザ・シェフズ・テーブル」でカリフォルニア料理(写真)を堪能。アミューズから始まり、クラブケーキ、口直しのグラニータ、白身魚のソテーと続き、デザートで締めくくる。ワインのペアリングも楽しみ、大満足の時間を過ごした。
日中は海外寄港地の文化にふれ、夜は生演奏に酔いしれる


朝7時ごろ、船は静かに海外の寄港地である韓国の釜山に入港した。前衛的なビルが立ち並ぶ景色(写真)を眺めながらメインダイニングの「ザ・レストラン」へ向かい、和朝食セットを選択。外国籍ではあるものの、この船では日本食にも力を入れている。ご飯に味噌汁、焼き塩鮭や卵焼きなど慣れ親しんだ味わいに朝からほっこり。日本食を担当しているシェフの曽木善治(そぎよしはる)氏は、「だしは昆布とカツオでとっています。1週間か10日くらいのクルーズで胃袋が疲れないよう、塩分は控えめにし、少し薄めの味付けを心がけています」と語る。優しい味わいながら、だしがしっかり利いたひじきの煮物などは、ご飯のお供にぴったりだった。
朝食後は「ゲストサービス」に立ち寄り、自由散策する予定の釜山について、シャトルバス情報やバス乗降地から徒歩圏内の観光スポットを教えてもらい、いよいよ外国に上陸。港からシャトルバスに乗って10 分ほどで釜山の繁華街、南浦洞(ナムポドン)に到着した。韓国を代表する海鮮市場の「チャガルチ市場」では、市場特有の活気あるやりとりに圧倒されつつ、水揚げされたばかりの魚介類がずらりと並ぶ様子を見学した。さらに高台に広がる龍頭山(ヨンドゥサン)公園に立つ「釜山タワー」、食器や雑貨、衣類や食料品などあらゆる店が集まる「国際市場」、映画に関するモニュメントやスターの手形などがあるBIFF(ビップ)広場、韓国名物のトッポッキの屋台が並ぶトッポッキ通りなどを巡り、釜山散策は終了。数時間で海外旅行気分を満喫できた。
ディナー後にバーラウンジの「1872」を訪れ、クラシックなカクテル(有料)で心地よく疲れをいやす。バンドの生演奏(写真)に耳を傾け、ロマンチックなひとときに酔いしれた。
自分だけのお気に入りの過ごし方がきっと見つかる


のんびりと過ごしたい朝には、ルームサービスを利用するのもよい。せっかくの船旅ということで、料理はバルコニーに運んでもらうことにした。船が進む波音と潮風が心地よく、海を眺めながら味わう朝食(写真)は格別だ。
バイキング・エデンでは、クラシック、コンテンポラリー、ノルウェー音楽など、さまざまなジャンルの曲が船内のあちこちで生演奏され、クルーズライフを豊かに彩っている。うっとりと音楽に聴き入っていると、クルーが「ドリンクはいかがですか」と声をかけてくれる。母国語が日本語ではないクルーたちが、あらゆる場面でていねいな日本語を使って話してくれる。こうしたホスピタリティーも、この船の居心地のよさと安心感に繋がっているのだろう。
読みたかった本を持参して読書したり、クルーズの経験を語り合ったり……。まるで自宅でくつろいでいるような快適さを感じさせてくれるバイキング・エデンは、自分だけのお気に入りの場所を見つけて、おとなのクルーズをかなえられる船だ。
※本記事は、『J-B Style2026 春号』(P32~41)を転載しています。

