Web限定連載
ココロとカラダが喜ぶ“ウェルビーイング”な旅
Vol.1

【大地ガストロノミー】「ル ゴロワ フラノ」(北海道)~生命力あふれる大地の滋味を全身で味わう

ハピネス

2026/06/26

旅をもっとナチュラルに自分らしく。“ウェルビーイング”とは、心身がともに満たされている状態のこと。忙しい毎日に、ココロとカラダが喜ぶ旅時間を——第1回は、大地の生命力が凝縮された滋味をエネルギーに変えてくれる「絶品の北海道キュイジーヌ」をご紹介します。

ライター
取材・文/山口あゆみ 写真/入江啓祐
エリア
北海道

おいしいもの王国の北海道。食材の生まれる場所で料理をしたいと、近年北海道に移住する料理人が増えている。東京・青山で25年にわたって名店として知られてきたフレンチビストロ「ル ゴロワ」もいま、富良野で「ル ゴロワ フラノ」としておいしい料理を出している。大自然と生産者がともに育んだ食材が生きた料理を味わうと、理屈抜きで体が喜んでいるのを感じることができる。

生産者の情熱が込められた食材

「ル ゴロワ フラノ」は大塚健一シェフとマダムの敬子さんが営むレストランだ。敬子さんは若き日に北海道の酪農学園大学で学び、北海道に魅せられた。25年前、大塚夫妻が北海道を旅したとき、富良野のとあるレストランで感動するほどおいしいチコリ(アンディーブ)に出合う。当時チコリはヨーロッパからの輸入が中心。ところが富良野に生産者がいると聞いて訪れたのが、現在北川和也さんが営む天心農場だった。広大な畑の向こうには大雪山の山並みが広がっていた(写真はタマネギ畑)。

当時天心農場の社長だった和也さんの父、光夫さんから「食材にはお金をいただくけれども、農家は野菜を育て緑ときれいな空気、水、豊かな土をつくっている。それは本来、神様の仕事の領分。だから農業は尊い」という話を聞き、全身全霊で野菜を育てていることに感動。それをきっかけに、東京に野菜を送ってもらうように。以来、天心農場のタマネギやホワイトアスパラの冷製スープ(写真)は、ル ゴロワ フラノの初夏から夏の定番の味となった。
「そこからのご縁で、生産者の方々を紹介していただいて、食材に恵まれて料理をしてきました。いまは物流もよくなったので東京まで一日で届くけれど、もっと生産者の方々の近くで料理をつくりたいと思うようになりました」と大塚シェフ。また敬子さんには「自然のなかで動物たちと暮らしたい」という夢もあったという。

「大好きな生産者がつくったものはおいしい」

こうしてふたりは、50代なかばにして富良野に移住した。
「『北の国から』の脚本家で作家の倉本聰(くらもとそう)先生とご縁をいただき、現在は富良野塾跡で馬、犬、猫と暮らしています。そして新富良野プリンスホテルの森のなかで『ル ゴロワ フラノ』(写真)を開くことになったのです」(大塚シェフ)
それが2018年のこと。いまでは富良野を中心に、北海道の生産者がつくった食材で「ル ゴロワ フラノ」の料理はつくられている。シグネチャーディッシュの「ル ゴロワ サラダ」(冒頭写真)は、約30種の旬の食材が一堂に会する大地の恵みが盛り込まれたひと皿だ。30の食材がそれぞれの個性を主張し、食べ応えがある。野菜の甘みにもいろいろな甘みがあることがよくわかる。
大塚シェフは料理のためにこういう食材がほしい、ということを生産者にお願いすることはないという。
「天心農場さんをはじめ、生産者の方々とは20年ぐらいのお付き合いになります。そして同じ地で暮らしていると、どのような気候なのかといった環境も肌で感じられます。だから手渡してもらった食材ありきで料理を考えています。大好きな生産者の方がつくったものなら何でもおいしいんだというのが私の結論です」

説明がいらないおいしさ、食材の力

メインの肉料理も道内の、長いお付き合いの生産者から仕入れている。例えば道東・白糠(しらぬか)町の茶路めん羊牧場の武藤浩史さんが育てる放牧羊は、広々とした山麓の地でストレスなく飼育されている。国産の羊は供給量の1%に過ぎず、のびのびと自然の草を食んで育つ羊はさらに少ない。その羊の骨付き背肉にタイムとニンニクで香りをつけ、つきっきりで薪火で焼いた後は、骨と筋からとったソースを加える(写真)。木の香りを含んだ、滋味深いおいしさ。またも体が「おいしい」と喜んでいる。脂に甘みがあり、そして胃に重く感じない。

「料理をお出ししたときに、あれこれ説明する必要がないのでありがたいんです」と敬子さん。大自然のなかで、自然をリスペクトしながら情熱をもって育てられる食材と、その個性をそのまま生かした料理。その両方が相まって、説明いらずのおいしさが生まれるのだ。
食事をしている間に、太陽の動きによって窓の外の緑も少しずつ色を変えていた。自然を目の前に自然の恵みをいただいていると、体の奥から少しずつ力が湧いてくるような感覚に。
「自然に力をいただきながら、料理をお出ししています。召し上がった方にも自然の力をぜひ体に取り込んでいただきたいと思っています」(敬子さん)
大地のガストロノミーを味わう旅は、明日からのウェルビーイングな日々の源になるエネルギーをプレゼントしてくれた。

シェフの大塚健一さん(写真右)とマダムの敬子さん(写真左)。

(*DATA)
ル ゴロワ フラノ

●住所 北海道富良野市中御料(新富良野プリンスホテル敷地内)
●電話番号 0167-22-1123
●営業時間 ランチ 正午~1:30PM(L.O.)  ディナー 5:30PM~7:30PM(L.O.)
●休み 月・火
●料金 ランチ6,500円(サービス料込) ディナー16,000円(サービス料込)
●公式サイト https://www.princehotels.co.jp/shinfurano/restaurant/legaulois/

※掲載内容は、2026 年5月時点の情報です。時期や天候、施設・店舗の諸事情により
変更となる場合があります。※価格は消費税込。L.O.=ラストオーダー。

TOP